第36章 【第三十五訓】ホストクラブ『高天原』の話 其ノ二
「この服、クリーニングして返しとくね」
『高天原』で拝借したスーツ。
着用したままホテルへと向かったため、未だ手元にある。
スーツをたたむ○○を見ながら、銀時は息を吐いた。
「どうかした?」
「いや。大したことじゃねェ」
次は自分ではなく、○○にいつもと違う格好を、メイド服でも着せてみるかと銀時は思案している。
「ご飯出来たわよ! 早く食べなさい!」
台所からおばちゃんの声が飛ぶ。
その声を聞きながら、○○は表情を曇らせる。
「狂死郎さんのこと、どうするの?」
狂死郎は自分が息子の八郎だと名乗らないと言っていた。
本人が名乗るつもりがないのなら、他人が教えるわけにはいかない。
「見つけらんなかったって、帰ってもらうしかねーだろ」
「本当は会えてるのに、寂しいね」
「アンタら! いつまでちんたらしてんの! ご飯が冷めちゃうでしょ!」
「はーい! いただきまーす!」
○○と銀時は食卓の席についた。
朝食を作り終えたおばちゃんは、かぼちゃの皮むきを始めた。
息子である八郎、今は狂死郎と名乗っている男に渡すための煮物を作る。
狂死郎が息子であるということに、おばちゃんは気づいていた。