第34章 【第三十三訓】一日局長に気を付けろッテンマイヤーさんの話
真選組は攘夷浪士の言いなりとなっている。
「お通ちゃんさえ、ちゃんと見ていれば……」
目の前で攘夷浪士の犯行を許すなど、○○にとっても屈辱。
「こんなもので視界が真っ暗だったから!」
○○は胸ポケットに引っかけていたサングラスを地面に叩きつけた。
ますます真選組のイメージが悪くなると訴える隊士達の横で、近藤は黙々とカレーを口に運んでいた。
その横で呼吸困難から回復した誠ちゃんもカレーを食している。
「まこっちゃん、もう帰っていいよ」
「近藤さん!」
「○○もな。あとは俺達でなんとかするから」
「そうもいかねー」
○○よりも先に、銀時が口を挟んだ。
イメージマスコットとしてはここで帰るわけにはいかない。
通から依頼料も前金でもらっている。
「そーいうイメージなの?」
「こーいうカンジだろ」
「どーいうカンジだ」
バカで物騒で江戸の平和を護るカンジ。
「で、○○に手綱を握られてる」
○○が手に持つ手綱は未だに誠ちゃんの首に括られたまま。
「局長と副長あたりが特に」
「私はただの居候だよ」
「いやいや、権力は局長以上だろ」
誠ちゃんはカレー作りをしている隊士にカレーを用意しろと命じる。
受け取ると、誠ちゃんは歩き出した。
「オイ、どこに行く。まこっちゃん」
「言ったろ。まこっちゃんはお前らのイメージマスコットだ。バカで物騒で江戸の平和を護る」
向かう先は『天狗党』の面々が籠城する異菩寺本尊。
「で、私に手綱を握られてるんだよね。オイ、こっちだ」
「いてて! カレーこぼれる! カレーこぼれる!」
○○は手綱を引いた。沖田のようなSっぷり。
『局長を斬れ』との命令に応じたフリをしている間に、人質は無事救出された。
「やっちゃったな~」
「やっちゃったね~」
銀時の言葉に○○は声を揃える。
真選組の一員として、恐らくは最初で最後であろう攘夷浪士の殲滅。
寺院半壊という愚挙を行いつつも、真選組の手で江戸の平和は護られた。