第32章 【第三十一訓】ミイラ捕りがミイラになった話
「そろそろお腹が減った頃でしょ。お料理作りましたよ」
妙は長刀以外にも兵器を持参していた。
卵がゆという、本来は生きるために食すもの。
「アレ? もしかして、今日は○○ちゃん、作ってないの?」
「うん。お妙さんが作ってくれるっていうから」
○○はジャンプから目を離さずに答えた。
銀時は青くなり、額から大量の汗を流している。
「姐御、私にやらして」
「ハイハイ、神楽ちゃんはお母さんね」
妙は神楽に茶碗を手渡す。
だが手が滑り、卵がゆという名の炭は先程妙が長刀で開けた穴へと落下した。
「むこうに残りがあるんでとってきます」
妙が背後を向いたのをチャンスとばかりに、銀時は布団から跳ね起きた。
「あっ!」
「銀さん!」
神楽と○○の上げた声に素早く反応し、妙は長刀を振った。
「ぎゃああああ!!」
銀時が外に逃げたため、妙と神楽も追って出て行った。
「○○さん、いいんですか。銀さん、殺されかねませんよ」
○○はジャンプを読み続けている。
隣の部屋で本を読みながら煎餅をかじっている新八は、その様子を見て声をかけた。
銀時の危機に出て行かない○○を見るなど珍しい。
「ジャンプはね、表紙をめくったら最後の目次ページまで、やめられない止まらないんだよ」
あの傷で生きていたんだからあれくらいで死にゃーしないさと、○○は楽観的思考。
それに、しばらく夜の中には出たくない。
*
山崎は理不尽な妨害に遭っていた。
長刀に串刺しにされかけたり、わけもわからぬ劇物に目を焼かれたり。
逃げようとしても、自らの上司のせいで妙な結界が道場に張られ、脱出困難になったり。猿がいたりゴリラがいたりで、結局、攘夷活動云々の情報は何一つ得られなかった。
それでも、門の外で見知らぬ女の子と会ったことで、確信はないけどそう思えた。
――攘夷活動とか旦那はしてないと思います。