第31章 【第三十訓】妖刀『紅桜』 其ノ四
五人、十人と峰で相手を気絶させていた○○は、轟音を耳にして上空を見上げた。
現れたのは巨大な艦船。
味方の援軍かと息巻いた桂の軍営は、艦船に描かれた旗印を目にして声を上げた。
「春雨!!」
「宇宙海賊春雨だ!!」
それは桂の仲間ではなかった。
高杉の仲間であるはずもなかった。だが、高杉一派の者達は天人に戦いを任せ、一歩退いた。
船から降りて来た異形の者達は、桂一派に攻撃を始める。
攘夷とは本来、天人を討ち払うもの。だが、高杉は幕府を倒すために敵であるはずの天人と手を結んだ。
「天人だァ?」
相手は宇宙人。
見てくれそのものが、地球人と違っている。
「わかりやすくていい!!」
これでターゲットがはっきりした。
○○は受け身の体勢を捨て、自ら敵の中へと突進する。
彼等が姿を現したのはその直後。
「邪魔だ、邪魔だァァ!!」
「万事屋銀ちゃんがお通りでェェェェ!!」
神楽と新八が声を上げ、敵を薙ぎ倒しながら突進して来た。
二人の背後にその姿を見て、○○は声を上げる。
「銀さん!」
安堵とも、憂慮ともとれるような曖昧な声音。
その姿を目にするのは、昨夜『紅桜』との戦いで瀕死の重傷を負わされて気を失った所を見て以来。
傷だらけだが、生きている。
「○○さん! 無事だったんですね!」
新八は○○へと駆け寄った。
本人の願いとはいえ、○○を見捨てたことは事実。ずっと心配していた。
しかし、○○の目には新八など映ってはいない。○○は新八の横をすり抜け、一直線に銀時へと向かった。
「銀さん!」
銀時は血の滲む○○の手首を目にし、眉をひそめた。
「悪ィな、○○。危ねェ目に遭わせちまった」
新八、神楽と共に○○がいなかったことを、銀時は不審に思った。
実は岡田に……と、新八は正直に告げた。
○○はかぶりを振る。自分より、銀時の方が余程の重傷を負っている。
生きて帰らなければ銀時がどれ程自分を責めたかと思うと、○○は心を痛くする。