第5章 【第四訓】喧嘩はグーでやるべしの朝の話
「昨日、河原に倒れてたから連れ帰った。それだけだってーの」
ソファにどっかと腰を下ろし、男はこめかみを押さえた。
まだズキズキと痛む。
「友達……」
少年は○○に目を向け、そして叫んだ。
「嘘吐くなァァァ! アンタに女の友達なんているかァァァ!」
「何それ、どんな偏見!? ○○、お前も何とか言え!!」
銀髪男とメガネ少年に揃って目を向けられても、○○は黙っていた。
「ホラ! 違うじゃないですか! 何も言わないってことは、違うってことでしょ!」
「嘘じゃねーって! 何でずっと黙ってんだ、○○! つーか、お前、何で江戸にいんだ!」
その言葉と同時に、○○は口を開いた。
「やっぱり、私のこと知ってるんですね」
「あ!?」
「□□……それが、私の名字なんですね」
「お前、何言って……」
「記憶がないんです」
○○の口から出た言葉に、男は押し黙る。
少年も何も言えず、二人はただ○○を見つめていた。
「私は、どこで育ったんですか」
ガキの頃からのダチだと、男は言った。ならば当然、知っているはず。
○○の生まれ育った場所、両親、兄弟姉妹、親しい友人。
「教えて下さい。私のこと」
○○は真っ直ぐに男の目を見つめた。