第5章 【第四訓】喧嘩はグーでやるべしの朝の話
「最低アル!」
○○もその声に目を向けた。
壁に身を半分隠すようにして、片目を覗かせている少女がいた。こちらも覚えのある少女だ。
彼女は○○と銀髪男を交互に見たあと、こう続けた。
「女の子のいる家に女連れ込むなんて、最低アル! 不潔ネ! 見損なったヨ!」
その言葉に、メガネの少年は顔を歪めた。
「い゛!? てことは何、銀さんが連れ込んだの、この人!」
メガネの縁を指で掴み、少年はマジマジと○○の顔を見た。
○○はなおも考えていた。
昨日、どうやってここに来たのだろう。
河原でこの男が目を覚ますのを待っていたことは覚えている。
自分の名前を知っていた男。そんな記憶の手がかりを逃すわけにはいかない。
しかし、一向に目を覚ましてくれない。日が暮れ、夜になり、その後、どうしただろうか。
眉間に皺を寄せ、口元に手を当てて考え込む。
「まさか……」
少年は傍らに立てかけてあった木刀を掴んだ。
「はー……」
木刀を構え、気合を入れる。
「ていやー!!」
銀髪目掛けて、彼はそれを振り下ろした。