第24章 【第二十三訓】隠し子騒動と盲目の剣士の話 其ノ二
「銀さん、肩ヘイキ?」
銀時と○○は、月明かりが照らす夜道を万事屋へと歩いていた。
岡田に斬られた肩を見上げる。着物の肩口は血で染まっている。
「どってこたァねーよ」
前を歩く銀時の背中を、○○は速足で追いかける。
岡田を倒し、銀時は五人と合流。房は賀兵衛と和解し、勘七郎を取り戻した。
銀時と○○は、房と話をしている新八達を残し、先に帰路へと着いている。
「○○?」
袖口を引っ張られ、銀時は振り返る。
目に入った○○は表情を強張らせていた。
「ごめん。もう少しゆっくり、歩いてほしい……」
銀時は空を見上げた。
そこには満月が浮かんでいる。
「悪ィ。気づいてやれなくて」
銀時は○○の頭を引き寄せ、自らの胸にうずめた。
「大丈夫」
銀時の腕の中で、○○は呼吸を整える。
煌々と照らす満月は、確かに○○を不安にしている。
だが、今の○○を揺るがしているのは、月明かり以上に岡田の言っていた言葉。
鬼、という言葉。
人の匂いなど理解出来ない。
だが、それが研ぎ澄まされた感性のようなものならば、あの男は長けている気がする。
自身の中の鬼の匂い。そんなものは、今の○○には思い当たらない。
閉ざされた記憶の一面を、岡田が読み取ったとするならば。それがまだ、○○の中にあるのならば。
いずれ蘇る日が来るかもしれない。
過去を思い出すことを、○○は不安に思い始めていた。