第24章 【第二十三訓】隠し子騒動と盲目の剣士の話 其ノ二
その人物は○○の隣で木刀を振った。
「銀さん!」
銀時は勘七郎の親を捜す過程で、この橋田屋へとたどり着いたようだ。
長谷川に事情を聞いた銀時は、勘七郎を賀兵衛ではなく房の手に渡した。
「逃げ切れると思っているのか?」
閉鎖されたひとつの扉が破られ、盲目の剣士が姿を現した。
「岡田似蔵。人斬り似蔵と恐れられる男だ」
○○は銀時に倒された浪士から刀を奪い、岡田との戦いに備える。
「てめェ……あん時の」
岡田の顔を見た銀時は呟いた。
「銀さん、知ってるの?」
「ああ、ちょっとな」
「おたくら知り合いかィ。そいつァはアンタの女か?」
岡田は抜刀の構えを見せる。
銀時は○○の肩を押す。いつ斬りかかって来るかわからない横に、○○をいさせるわけにはいかない。
「その女の匂い、アンタに似てるよ」
「お前、俺のこと獣の匂いとか言ってなかったか? こいつからそんな匂いがするわけねーだろ」
岡田は口元を緩めた。
「変わった匂いなんだよ」
一人の人間の匂いにしては、相反するような匂いが混ざり合っている。
仄かに香るのは、銀時のように隠しきれない獣の匂い。
いや、他の匂いに隠された奥底から鼻を打つのは……
「獣というより……鬼かね」
言い終わると同時に岡田は抜刀した。銀時の横を抜ける。
銀時の肩から血が噴き出す。