第24章 【第二十三訓】隠し子騒動と盲目の剣士の話 其ノ二
「うわあああ!!」
四人は背中で扉を破り、部屋の中へと突入した。
得物がモップでは、この男を相手に斬り合いなど不可能なことはわかりきっていた。
せめて、一瞬でも行く手を開ければ脱出出来る。
そう踏んで飛びかかったが、○○よりも男の一太刀の方が早かった。
後ろに飛びのきながら男の刀を受ける。
モップは真っ二つ。
「ヒドイじゃないかィ。盲目の障害者相手にいきなり襲いかかるなんて」
男は左右に首を振っている。
口元には笑みを湛えている。
○○は眉間に皺を寄せた。
「お生憎。私も記憶喪失障害者なんで」
だから対等と言ってから、○○は首を傾げた。
「アレ? 記憶喪失って障害かな? 新八君」
「知りません」
「何事だ?」
賀兵衛の厳しい声が飛ぶ。
「ちょいとあやしいネズミを見つけたもんで」
周りを大勢の浪士に囲まれる。
全員が刀の柄を握り、今にも四人に斬りかからんとしている。
こちらは誰も武器を持っていない。
モップも両断され、対抗する手立てはない。
ならば、逃げるが勝ち。
「砂糖でごぜーますよな!!」
神楽は隠し持っていた煙幕を床へと投げつけた。
娘を助け出し、窓を破って屋根へと逃げた。
○○は周囲を見回す。ここはビルの最上階。
奴等に気づかれる前に、退路を見つけて逃げなければ。
しかし、そんな猶予は全くなかった。
退路を見つける前に自分達が見つかった。
盲目の男に煙幕など関係がなかった。