第23章 【第二十二訓】隠し子騒動と盲目の剣士の話 其ノ一
その朝、万事屋、もとい『スナックお登勢』は静かに騒然としていた。
「腐ってる」
「腐ってるね」
世の中全てを卑下したような疑惑の目を向ける新八。
目の前の男の人間性全てを否定したような鋭い目つきのお登勢。
二人の視線は銀時に注がれている。
「だから、身に覚えがねェって言ってんだろ」
「ばぶー」
銀時の腕の中には、親指をしゃぶる赤子の姿。
死んだ魚のような目をし、銀色の天然パーマという風体の赤ん坊。
つまりは銀時と瓜二つ。みなが疑いの目を銀時に向けている。
赤ん坊は万事屋へ上る階段の下に捨てられていた。
『あなたの子供です。責任とって育てて下さい。私はもう疲れました』という紙が添えられて。
「どうするんですか。この子の母親捜して、一緒になるんですか」
「だーから! この子の母親なんて知らねェ!」
新八は溜め息を吐く。この場に○○がいなくてよかった。
昨年末、姉は言っていた。「○○さん、銀さんに気があるみたいじゃない」と。
銀時が○○のことを憎からず思っているのではないかと、新八は薄々思っていた。
だが、姉は○○の側から銀時への恋情がうかがえるという。
近いうちにしっぽりいきそうだと思っていた所にこの隠し子。
○○はショックを受けるだろう。
折を見てそれとなく告げよう、どう告げようと考えている最中、ガラリと店の扉が開いた。