第21章 【第二十訓】『えいりあんVS侍の圖』の話
「さっきからヤケにパトカーが走ってるなァ」
軒先の暖簾を上げ、○○は往来に目を向けた。
今日は朝から茶屋でアルバイトをしている。
三十分程前から、何度もその音を聞いている。
ウィーンウィーン、ウォンウォンと轟かせ、白黒の車体が目の前を走り抜ける。
「大江戸信用金庫で立てこもり事件ですって」
客の言葉を聞き、帰ろうとしていた足を戻して○○は店へと戻った。
テレビ画面には『生中継』の文字と、緊迫したアナウンサーの様子が映されている。
大江戸信用金庫はこの店からさほど離れていない。
心配そうに画面を見つめる客達同様、○○も画面に目を向けていた。
やがて映し出された二人の人物を見て、○○は口をあんぐりと開けた。
「何してんの、あの二人」
後ろ姿だが、腰に木刀を差した銀髪を、他の誰かと間違えるはずはない。
隣にいる特徴のない少年も、銀髪の横にいるならば特定される。
二人は今にも信用金庫に入らんとしていた。
自動扉が開き、信用金庫内の様子が衆目に晒される。
その光景は、カメラを通して○○の目にも映し出された。
「か、神楽ちゃん!?」
ほんの一瞬、銀時と新八の背中の間に小さく見えただけだが、それは間違いなく神楽だった。
神楽が宙に浮いていた。犯人と思しき人物の口から出た臓器のようなものに絡みあげられ、彼女は浮いていた。
○○は茶屋を飛び出し、現場へと急行した。