第20章 【第十九訓】でんでん虫虫エスカルゴの話
「オイオイオイ、なんだコリャ」
目の前の皿に置かれた渦巻きを目にし、銀時は声を上げる。
「どう見てもかたつむりじゃねーか」
依頼主の主人は面会時間に遅れ、四人は待たされていた。
万事屋一行の前に並ぶのは、見たこともない豪華料理の品々。
「コレ、アレですよ。『えすかるご』だかなんだかいう高級料理っスよ」
○○もエスカルゴというかたつむり料理の存在は知っているが、どんなものかは知らない。
「お前、真選組で飯炊き女だったんだろ。料理の知識くらいあんだろ」
「誰が飯炊き女よ!! 私はれっきとした監察方でした!!」
○○は声を荒げた。だが、日々の料理を作っていたのは事実。
記憶をたどり、屯所での生活を思い出す。
「料理って言ったって……」
自分が食卓に置いていたものを思い出す。
茶碗の上に白いにょろにょろ。ボウルの上に白いにょろにょろ。汁椀ですら白いにょろにょろ。
「ダメだ。マヨネーズしか蘇らない」
○○は頭を抱える。
頭の中でマヨネーズの妖精が踊り狂う。
毎日毎日、マヨネーズは切らすなと言われていれば、マヨの怨念にも憑かれる。
「大体、真選組の食卓だって、うちと大差ないんだから。こんな豪華料理が並ぶわけないでしょ」
松平ら上官からたまに差し入れはあるが、普段の食卓は質素なものだ。
○○はフォークとナイフを構えてかたつむりを見つめた。食べ物だとしても、どうやって食すのだろう。