第19章 【第十八訓】細かく数えなきゃ煩悩って108もなさそうな話
薄暗い街頭に照らされて、スクーターをひいた人影が歩いて来る。
その姿を確かめた○○は声を上げた。
「銀さん!」
自分の名前を聞きつけた銀時は、駆け寄って来る○○を見て声を上げた。
「○○!? 何してんだ、テメー! こんな時間に出歩くなって言ったろーが!」
周りには、新八も神楽も妙も見えない。
以前のように倒れることがあったら、一人では危ない。
「どうしたの! 銀さん!?」
近づいてみると、銀時は血にまみれていた。
スクーターに乗らずに歩いていたのは、大破していたからだった。
「まさか、また事故!?」
私は誰ですかァァァ! と、○○は叫ぶ。
「うるせー! ○○だ! って、さっき名前言っただろーが!」
「なんでジャンプ買いに行くとケガするのよ! ジャンプの霊にでも憑かれてるんじゃないの?」
「変な忍者に因縁つけられて絡まれただけだ。ジャンプに罪はねェ」
「忍者?」
首を傾げながら、○○は気がついた。
ジャンプを買いに行ったのに、ジャンプが見当たらない。
「銀さん、ジャンプは?」
「まだ探してる途中だ」
どこに行っても売り切れで全然見つからないという。
「それより、体は何ともねーのか」
銀時は眉間に皺を寄せて○○に目を向けた。
「今日は大丈夫だよ」
○○は夜空を見上げた。
「今日は空が暗いから」
「あ?」
月が出ていなければきっと大丈夫だと、○○は自分の考えを伝えた。
「月と○○の体調に何の関係があんだ」
「知るわけないじゃない。そんなこと」
「わかんねーなら、本当に月が出てなけりゃ大丈夫なんて言えねーだろ」
「それはそうだけど……」
「出来るだけ夜は家にいろ。どうしても出掛ける用があるなら、俺に言え。どこにでもついて行ってやらァ」
いいな、と銀時は念を押し、スクーターをひいて歩き出した。
「うん」
銀時の隣に並び、○○はその横顔を見上げた。
「銀さん、あけましておめでとう」
「ジャンプが見つかるまでは、めでたくねェ」
溜め息をこぼす銀時を見上げながら、○○は笑顔を浮かべる。
年が明けたばかりの暗い夜道を、二人は歩調を合わせて歩いて行く。