第17章 【第十六訓】ドリームキャッチャーな話
「みなさ~ん、夢見てますかァ!!」
『夢幻教』の創始者、斗夢は壇上で声を上げる。
斗夢を見上げるように取り囲んでいるたくさんの信者達は、拳を上げて応えた。
「見まくってまーす!」
○○はうごめく群衆を見て呟いた。
「ある意味、壮観」
万事屋一行と妙は、花子のために『夢幻教』の本部へとやって来た。
花子は夢を追って大阪から上京して来た、妙のアルバイト仲間。
インチキ宗教『夢幻教』に貯めていた資金をお布施と称して取られてしまった。
その話を聞き、取り返すべく乗り込んで来た。
そして、その奪い返した資金から支払われる報酬が目当てだったりもする。
「夢に向かって走り続けてますかァ!!」
壇上には、斗夢以外にも六人の姿がある。
顎に毛の生えたホクロをつけた銀時。右耳たぶに毛の生えたホクロをつけた○○。
右頬に毛の生えたホクロをつけた新八。鼻の頭に毛の生えたホクロをつけた神楽。
左目の下に毛の生えたホクロをつけた妙。額に毛の生えたホクロをつけた花子。
全員、毛の生えたホクロをつけている。
それこそが、夢を掴むために必要だと騙されて花子が大枚をはたいて買わされた、ちっさい黒豆。
彼等も拳を上げ、斗夢の声に応えている。
五人は花子が勧誘した信者を装い、『夢幻教』の総本山へ乗り込んでいた。
「志村妙さん、アナタの夢はなんですか?」
「父の道場を復興させることです」
斗夢はひとりひとりに夢を聞いた。
「依頼がガッポリ舞い込んでガッツリ儲けられたら最高です。出来れば極悪人をバッサバッサ斬れるような大活劇が演じられる依頼を希望します」
ニコニコと、○○は答える。
目の前にいる斗夢の顔には『極悪人』という文字が浮かんで見えている。
最後に銀時が答えた。
「夢? そんなもん、遠い昔に落っことしてきちまったぜ」
手すりに右肘をかけ、哀愁の漂う雰囲気を醸し出している。
「記憶? そんなもん、遠い昔に落っことしてきちまったぜ」
銀時と向かい合う格好で、○○は左肘をかけた。
「夢を落とすのと、記憶を落とすのと、どちらが人にとって不幸なんでしょうね」
その隣で、新八も肘をついて並んだ。