第15章 【第十四訓】メガネがないと明日も見えない話
「おはよーございます」
その日、新八は朝から万事屋を訪れた。
朝といっても日はとっくに昇っている。
起きていたのはたったの一人。
「おはよう、新八君」
「○○さんしかいないんですか?」
「銀さんも神楽ちゃんもいるけど、まだ寝てるよ」
「寝てるって、こんな時間までですか」
「まァ、いつものことでしょ」
ソファに横たわっている定春は新八と○○を見つめている。
○○は定春の餌を器に入れて床に置いた。
「○○さん、銀さんと神楽ちゃん、甘やかさない方がいいですよ」
ガツガツと食べる定春を○○はよしよしと撫でる。
「ああいう輩はちゃんと躾けてあげないと」
幼少期からしっかり者の妙に躾けられた新八には、ぐうたらして時間を浪費する生活が信じられないようだ。
「銀さん、昨日遅かったみたいだし。仕事も入ってないから、まだ寝てても問題ないよ」
昨夜、○○が寝る時間までに銀時は帰って来なかった。
朝になっても帰っていないこともたまにあるが、そういう時はどこかで酔いつぶれ眠ってしまい、そのうちに帰って来る。
今日は玄関にブーツがあるので飲みつぶれることなく、きちんと帰って来てはいるようだ。
「神楽ちゃんはまだ子どもだし。寝る子は育つって言うし」
「何言ってるんですか。普段からしっかり生活していないと、イザっていう時に行動出来ませんよ。それから、神楽ちゃんは寝すぎです」
起こしますと言って新八は神楽の寝室へ向かった。
神楽の寝室はリビングを出て左手にある。
○○は反対の右手にある台所へと向かった。起きるなら、朝食の準備をしなければならない。
手を洗おうと蛇口を捻った所で、
「来るなァァァ!!」
という新八の大声が聞こえた。
蛇口を止め、リビングへと戻る。
「どうしたの、新八君」
銀時の寝室の前で新八と神楽が襖をガタガタと言わせていた。
神楽は開けようと、新八は開けさせまいとしているらしい。
軍配は神楽に上がり、パンッと音を立てて襖が開けられる。
新八はうなだれている。
「どうしたの? 銀さんに何か」
近づいて部屋の中を見た○○は言葉を失った。
眠っている銀時の上に一人の女性が覆い被さっていた。