第14章 【第十三訓】ベルトコンベアに挟まれた工場長の話
「解決したのは新八君でしょ」
○○はそろばんを取り出し、珠を弾く。
蚊取り線香のために女が逃げたことに気づいた新八は、うなされている隊士達にある共通点を見つけた。
みんな、蚊に刺されたような痕があった。
原因の女が幽霊ではないことを突き止め、捜していた四人は、庭に立ち尽くしている銀時を発見した。
その足元には痛そうに頭を押さえて座っていた土方と、気を失ってのびていた女がいた。
「そりゃ、結果論だ。一連の流れを見てみろ。どう考えても、俺の功績だ」
土方は譲らない。
「そうだね。一連の流れ見てみなきゃね。二人ともただの臆病者だったね。大の大人が。ププッ」
○○は口元を押さえて失笑する。
「アレはお前、びびってたんじゃねェ」
「むしろ俺はこーゆうの好きだぜ」
強がりを言い、互いに怖がっていないと言い張る銀時と土方。
その最中、背後の障子が開いた。
「銀ちゃん、そろそろ帰……」
○○は振り返り、そこに神楽の姿を確認する。
しかし、振り返る途中に見えるはずの土方の姿が見えなかったことに疑問を抱く。
視線を右へと移動させると、そこには土方だけでなく、銀時までもがいなかった。
「何やってるアルか」
神楽が縁側の下を覗き込んでいる。
○○は足元へと視線を移動させる。銀時と土方が揃って縁側の下に潜っていた。
「いや、コンタクト落としちゃって」
声を重ねて答えると、二人揃って起き上がった。
「ダメだな。暗くて見つかんねーよ」
「諦めて新しいの買うとするわ」
そろばんを片手に、○○は二人に視線を向けた。ジーッっという擬音をたずさえて。
「何だァ、その疑いの目は」
「もしかして、ビビッたとでも思ってんの?」
何事もなかったように、土方は再び腰をかけ、銀時は寝そべった。
シャカシャカと、意味もなく○○はそろばんの音を響かせた。
「いい加減に認めたら。二人とも」
足元に土方と銀時が這いつくばっている。