第6章 丁子桜
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夜寝る前に水でも飲もうと、部屋を出ると叫ぶような声が聞こえて急いでその声の方に行こうとするも、ぐいっと腕を引かれてどこかの部屋に連れ込まれる。
「っ」
私も叫ぼうと意を決した時、嗅いだことのある匂いに一瞬で頭が冷静になった。
「至、さん?」
暗いけどPC画面が青く光ってる。
「なにしてんの、」
「なにって、叫び声が聞こえて…何かあったのかな、と」
「へぇ。こんなふうに簡単に連れ込まれちゃうのに?何も持たずに?怪しい人ならどうすんの。」
その言葉に、次からは武器を持っていく!!
…と、宣言しようとおもったけど、
よくよく考えたら今その怪しい人は私を連れ込んでいる至さんではないかと思い直す。
「まぁ、俺も言えないけどね。」
そう言って私から離れて、カチッと電気をつけた至さん。
部屋のものの多さに、やっぱり103号室だったかと確信する。
「それと、さっきの叫び声は監督さん。トボトボ歩いてた咲也に驚いただけみたいだから、心配しなくていいんじゃないかな?」
「咲…」
「あと、それ。」
「え?」
「バレちゃうよ、咲也に。」
「…なにを、」
「咲って呼んでること。隠してるんじゃないの?」
…ドキッとした。
「たまにあるな、とは思ってたんだけど。最近多いよね?それとも、そう呼ぶくらい仲良くなったってこと?」
自分では全く気づいていなかったことに、冷や汗をかく。
「それは、」
「まぁ、いいけど。ゆっくりしていきな、コーラしかないけど朝と同じ顔してる。…俺のせいかもしれないけど」
そう言ってパソコンの前に置いてある椅子に腰掛けて何もなかったかのようにゲームを始める至さん。
「…」
「外のことなら多分大丈夫だよ、シトロンと真澄も気にしてたしね。」
「…みんなも、気づいてるかな、」
「…何について?」
「咲って、呼んでること」
「さぁ?俺はただ気になっただけだから。みんなには聞かないと分からないな。…まぁ、でもいいんじゃない?咲也はそんなことで怒らないでしょ」
「それは、だめなの!!」
思わず大きい声が出る。
「ダメなの、…咲にはバレちゃだめなの、」
「…」
「どうしよう」
立ってられなくて
床は思ったより冷たくて、
…不安になる。