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3月9日  【A3】

第31章 普賢象


 それに何の意味もないんだけど。

 「ここにきて何時間だろう」
 「まだオレの髪弄ってるの?」
 「密さんこそ、いつまで私の膝で寝てるんですか」
 「東と至と紬とアリスの次…監督の次?くらいに寝心地いいから」
 「5本の指にすら入ってないじゃないですか」
 「寝てると髪弄ってくるから、芽李は」
 「こんな状況じゃなきゃしませんよ。内側から開かない部屋ってなんですか、それ。意味がわからない」
 「オレは何回かある」
 「危機感持ってくださいよ」
 「一応あるよ。それに、多分そろそろ」

 ガチャっとドアが開く。

 「ひそかとめいいたー」
 「三角だった」
 「そうだね」
 「冬組のみんながひそかのこと探してたよー」
 「マシュマロ」
 「あずまがギモーブあるって言ってた」
 「芽李、オレ先に行くね」
 「あんな俊敏な密さん久しぶりに見た」
 「オレも」

 密さんがいなくなってすぐ、ガチャンと三角くんの後ろで扉の閉まる音がした。

 「え?」
 「めいごめんね、閉めちゃった」
 「なにしてんの?!」

 三角くんの目が光ったように見えて、少し怖かった。

 「"悲しくて泣きたくなったらオレを呼んで"」
 「え?」
 「言ってたと思うんだけど」

 確かに言われた気がする。
 もう随分前に。

 「悲しそうに見えますか?」
 「わからない」
 「悲しそうに見えたから、閉めたんでしょ?」
 「んー、オレが寂しかったのかも」
 「三角くん?」
 「めいのこと、あんまり寮で見かけなくなった。いつも忙しそう」
 「見かけなくなったって、いるよ、ずっと。ここが私のお仕事の場所だし」
 「ううん。前みたいに泣いたり笑ったり忙しくない」
 「さっき忙しそうって言ってたのに?」

 彼が言おうとしていることは、なんとなくわかって、誤魔化したのは私。

 「…」
 「ごめん、大人げなかった」
 「めいはいつもそう」
 「いつも?」
 「うん。帰ってきてから、なおさら積極的に1人になりにいってる」
 「そんなことないよ」
 「ちかげといたるのこと、避けてる」
 「…」
 「全然さんかくじゃない。…ん?さんかく?さんかくなのに、全然さんかくじゃない」
 「三角くん」
 「ここから出たら仲直りして」
 「誰と?」
 「2人と」
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