第6章 丁子桜
「そろそろ、空港についた頃かしらね。」
「何時の飛行機ですか?!」
「14時っていってたかしらね。」
それを聞いて飛び出す。
ー…そっか、だからだ。
迎えは今日はおじさんが行くって言ってた。
そんなことあまりないのに、たまにはこれくらいさせてほしいと言われ信じてしまっていた。
冷静になって考えれば当たり前にわかるはずの違和感にどうして今更になって気づくんだろう。
走っても走っても空港にはつかない。
こんなんじゃ、飛行機が飛んでしまう。
一体、
時間内にどこまで行けるかわかんないけど足が折れそうになるまで走って、
走って、
走って…
結局空港に着いた時には14時50分と電子時計が表示していた。
…本当はどこかでわかってた。
ジワジワと潤んでいく目。
先を行く人にバレないようにぐっと唇を噛んでいると鉄みたいな嫌な味がしてくる。
「芽李ちゃん?」
へとへとになって、
その場に座り込もうとした時、聞こえてきたのは久しぶりに聞いた大家さんの声だった。
「おおやさん…」
あの家に行ってから最初のうちはよく連絡をくれていたけど、それも無くなって…
「どうしたんだい?具合でも悪いのか?」
首を左右に振る。
「咲也くんは?」
それにも、首を振る。
「…っ、わたし、一人で…今は。咲は、何にも言わないで本州に行って、どうしよう…っ、大家さん、咲が、咲がいなくなっちゃった、、咲がっ、」
ゆっくりとことの経緯を伝えれば、大家さんも少しずつ顔が歪んでいく。
「…芽李ちゃん、君さえ良ければまた戻って来ないか?
部屋は昔のまま残してあるんだ。どうしても君たち二人が気掛かりでね。」
ぽんぽんと肩をさすりながら、大家さんが切り出す。
「でも、咲が…っ、」
「大丈夫、迎えにいけるときがくるさ。
…あのまま、うちに来ていいと本当はあの日に言ってあげるべきだったね。よし、そうと決まれば一旦君のうちに言って話をつけてこよう。」
大家さんはそう言って私に笑ってくれた。
貯金も、両親が残してくれたものがまだ少しあった。
バイトだって探せば出来るかもしれない。
でも、それに首を振らなかったのは意外にもおばさんとおじさんだった。