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3月9日  【A3】

第6章 丁子桜


 「短期間でよくここまで伸ばしたじゃねぇか」

 そう言った雄三さんに、嬉しそうなみんな。

 「ただし

 クライマックスに盛り上がりがねぇな。
 終わりがどうもあっけねぇ」

 …そっか、そう言うものなのか。
 と、私も耳を傾ける。

 台本ではなくて、演出に問題があると言った雄三さんにいづみちゃんも頭を悩ませ、咲は歌うと言ってる。

 それはそれであり、だって咲の歌ききたいんだもん。
 合唱コンクール、見てあげられなかったから。

 って、それは今度歌ってもらおう。

 イタリア、ヴェローナ、…
 対立、友情、ラスボス…

 ラスボスは至さんに引っ張られすぎか。

 えんしゅつ、えん出、演出…
 あぁ、そっか。

 「最後に殺陣…とか、かっこいいだろうな」

 ボソッと呟く。

 「!!」
 「ふ…、終盤のロミオとジュリアスのシーンに、簡単な殺陣を入れてみたらどうだ。」
 「殺陣ですか?でも、殺陣の練習は全然……。」
 「短いシーンで集中的に練習すれば、今からでもなんとかなるだろ」

 殺陣の指導ができないと言ういづみちゃんに、そうだよなぁと思っていると、

 「俺が直々に仕込んでやる」

 そう言った雄三さん。

 見たいな、みんなの殺陣。
 だって、絶対かっこいい…

ーーーーー
ーー

 そして翌朝。
 宣言通り、殺陣の指導をしに来た雄三さん。

 「おい、お前」

 やっぱり、一対一はやだな。
 少し怖い…

 気づかないふりして良いかな?いいよね?

 「酒井だったよな?」

 ぎぎぎとブリキ人形のように振り返る。

 「う……はい、」
 「ははは、そんなびびるんじゃねぇ。取って食ったりしねぇからよ。」
 「…ビビってません」
 「そうか。まぁいい。ところで、殺陣って思ったのはどうしてだ?」

 なんで私が思ったこと知ってるんだろうと考えるも、そういえばこの人は見透かすのが得意な人なんだったと片付ける。

 「思い付いたとかじゃなくて、みんなが見せてくれたんですよ。
ロミオやマキューシオ、ジュリアスにティボルト。それから神父様が実際に見えて、どうやって動くかを考えなくても分かるくらいに。」
 「…へぇ。そうか。」
 「おかしい、でしょうか?」
 「いや、その感覚大事にしたほうがいい。あいつらのためにもな。」

 …なるほど、そういうもんか。
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