• テキストサイズ

3月9日  【A3】

第6章 丁子桜


 少し長いと思っていた道なりも、かずくんの話がうまいからあっという間に着いてしまった。

 「って、劇場ってここ?でっかいね!!わーお!!
 テンアゲすぎー!!デザインの参考にしたいからさ、写真撮ってもいい??」
 「うんっ」

 まじめなテンションで言っておきながら次の瞬間にはコロコロと表情が変わっている。
 彼が満足するまで写真を撮るのを待っていると、くるっとふりむく。
 …なんか、ワンコみたい。

 「ありがと♪じゃあ、中案内してもらってもいい?」
 「はーいっ」

 少し重いガラスのドアを開くと少しだけ体育館のような匂いがする。
 そこを入って少し言ったところに金色で縁取られた扉の前に立つ。

 「ねね!芽李ちゃん。舞台の入り口ってここ?
入ってもいい?」

 「もちろん。」

 「じゃあ、お言葉に甘えて…」

 見た目に反して少し軽いドアはかずくんによって開けられて、次の瞬間には会場に響く大きな声で挨拶をしていた。

 「こんちはー!

 すげー!何これ。マジ、舞台とか初めて立った!」

 会場に反響する声が物珍しいのか、フットワークの軽さでささっと舞台の上に上がってしまう。

 「広えー!テンアゲすぎ!」

 ワクワクした表情にこっちまで嬉しくなってしまう。
 一方で勢いに押されたいづみちゃんは、

 「誰、あれ……」

 と、呆気にとられている。
 それに対してかずくんの紹介をしている綴くん。

 ”オレはさ、大好きなんだよね"

 そう言うことか、と少しだけ納得する。

 「三好さん、どもっす」
 「おー、つづるん、久しぶり!
 すげーな、ほんとに劇団やってんだ。」
 「つづるん?!」

 驚く咲と、うざいと一蹴にする真澄くん、そしてなぜか嫉妬するシトロンくん。
 わちゃわちゃするみんなにもあっという間に溶け込んだカズくんは気づいたらシトロンくんと写真を撮ってる。

 「監督兼主宰の」

 さっきまで呆気に取られていたいづみちゃんも気を取り直してカズくんに近づいて挨拶をするものの、

 「あ、りょっす」

 って返事にはやっぱり驚きを隠せないみたいだ。

 「つづるんに聞いたんで、おけっす。
とりまソッコーでラフあげちゃいます。」
 「あ、そ、そう」

 
/ 555ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp