第6章 丁子桜
「芽李ちゃん、これから綴くんの先輩のデザイン得意な子が来るみたいなんだけど対応お願いしてもいいかな?
こっちに着いたら案内してもらうだけでいいんだけど」
みんなのご飯を用意してる最中に、必死な様子で頼むのはここの監督こといづみちゃん。
「もちろん!劇場までご案内すればいいんだよね?ちょうどご飯の下準備も終わるし、任せてよ」
ペーパータオルで手を拭きながら答える。
「じゃあ、ほんとにごめんね。先に劇場いってるね。
よろしくね!」
申し訳なさそうに言いながら、バタバタと慌ただしく談話室を出たいづみちゃん。
確かに春組のみんなはもう少し早く劇場に向かっていたはずだ。
そう考えていると、ものの数分でチャイムが鳴った。
ー…ピンポーン
私はパタパタとスリッパを鳴らしながら玄関に向かう。
「はーい、どちら様…」
ニッコリと笑って目の前に立つ金髪の男の子に私は見覚えがあった。
「こんにちは!あれ?
もしかしてお姉ぇさん、オレと会ったことある?
こんなに綺麗なお姉ぇさんなら、オレ絶対忘れないもんなぁ
んー…
…じゃなかった!つづるんに頼まれて来たんだった!」
「あ!デザインの」
「そうそう♪つづるんいますか??」
そんな彼に、みんなが劇場にいることを伝えると案内してほしいと頼まれた。
すぐに用意して、彼の元に行けばその瞬間までイジっていたケータイから視線を上げそれをポケットにスマートに入れているのが目に入る。
そうしてるうちにコミュニケーションを取るのが上手い彼のペースに乗せられて、あっという間に自己紹介を済ませていた。
「へぇ、芽李ちゃんって言うんだ♪名前もかわいいね!」
劇場までの道中サラッと褒め言葉を言いつつ、話が途切れないように言葉を繋いでくれる三好くんは、なんていうか派手な見た目とは違って丁寧というか、繊細な感じがした。
「三好くんは、」
「カズでいいよ!」
「かずくんは、綴くんとは長いの?」
「…それなりに?」
ワンテンポ遅れた返事が気になって言葉の続きを待つ。
「オレはさ、大好きなんだよねっつづるんのこと。
だからつい構いすぎちゃうって言うか、だから行きすぎたら止めてね、芽李ちゃん。」
その声と言葉がちょっぴり切ない。