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3月9日  【A3】

第6章 丁子桜


 最後に来たのは、至さんだった。
 …昨日の今日できまづいのは私だけらしい。

 私を視界に入れると、目を少しだけ見開いてフワッと笑う。


 「来たんだ?」
 「まぁ…、」

 「じゃあ、至さんも来たことだし稽古始めようか!!」

ーーーーー
ーーー

 「はい、それじゃあ、一時間休憩」

 いづみちゃんの声がけでみんなが動きを止める。
 初めて見た本格的な稽古は、なんだかとっても感動してしまった。

 「ま、綴くん、はい。飲み物とタオルどーぞ!
てぃたるさんも、ろ…じゃなくて、佐久間くんとじゅ、真澄くんとシトロン様も!どーぞっ
 監督もお疲れ様です!」

 みんなはキョトンとしている。

 「ぷ、なんだよ"てぃたる"って。ティボルトか至かどっちかにしてよ」

 至さんの指摘にうまく誤魔化されてはくれなかったかとおもいながら強気で行く。

 「そ、そんなこと言ったって仕方ないじゃないですか、だってすごかったですし、…うぅ」
 「芽李ちゃんから監督って呼ばれる日が来るなんてね笑」

 いづみちゃんから追い討ちがかかる。

 「みんなのこと役名で呼んじゃいそう…」
 「じゃあ、アレだな。芽李さんが俺らのこと無意識に役名で呼んだら勝ちだな」
 「なんの勝負?」
 「役になりきるっていう勝負。そしたら雄三さんにも勝てるかもな」

 戯けて笑った綴くんにみんなも釣られて笑う。

 そんな開いた扉にみんなが注目する。

 「監督、みつかりましたよ!」
 「え?」
 「失礼しまーす」

 その声の主に見覚えがあって。

 「…」

 「ご紹介します!
 新しく衣装係として応募してきてくれた瑠璃川幸くんです!」
 「どーもー。」
 「女の子?」
 「は?」
 「あ、ご、ごめん。違うんだ?」

 ぱっちりな夕日のような目と視線が合う。
 緑の髪が揺れてあの日のことを思い出す。

 彼が着ている服はあの手帳の初めの方に書いてあった…気がする。
 「すごい、」
 「え?」
 隣にいる綴くんが怪訝そうな目でこっちを見てくるのには気づいたけど、この衝動は抑えられるはずもない。

 「みんなの衣装、幸くんが作ってくれるの…?」
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