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3月9日  【A3】

第6章 丁子桜



ー…ドンドンッ

 「んっ、ん?はよ、いづみちゃ…」
 「みんながいないの」
 「え?!え…そんな、」
 「お願い、探すの手伝って!!」
 「すぐ行く!!」

 外着に着替えるのも煩わらしくて、上に厚手のパーカーを着るくらいにして外に出る。

 「私、あっち探してきます!!」

 どうしよう、どこにいっちゃったんだろう。

 みんなは、いなきゃ困るのにっ、

 雄三さんが来たことで、
 厳しいことをいわれて、

 でも、そんなことで逃げるみんなだとは思わないけど…

 でも、すごく傷ついてたらどうしよう。

 ぐるぐるぐるぐると考えて暗い中を探す。

 …っ、

 みんなが辞めちゃったらどうしよう。

 きっと、みんなが来なければ
 いづみちゃんが来なければ、

 支配人と私だけだったら、

 私がいる意味って、


 「…」


 みんなを探しているうちに結局辿り着いたのは、MANKAI劇場。

 鍵が空いていて、うっすらと光がもれている。


ー…ぎぃ


 「いた。」

 舞台の上で寝息を立てるみんなが、

 「芽李ちゃん、」
 「いたよ、みんな。寝てるみたい」
 「み、みんな寝てる……?でも、なんでこんなところで……?」

 「……むにゃむにゃ、カントク、頑張りますから………。」

 「…咲は、変わらないな。」

 ボソッと溢れてしまった言葉に、まずいと思いながらも何も言わないいづみちゃんにきっと聞かれていないだろうと思いながら言葉を紡ぐ。

 「みんな、大丈夫みたい」
 「うん。よくわからないけど、板の上で何か考えたかったのかな。
 舞台から逃げないで、向き合おうとしたんだね」

 "逃げない"…か。

 「起こしちゃまずいし、そろそろ行こっか。芽李ちゃん、探すの手伝ってくれてありがとう。」

 「ううん。」

 「……さて。


おやすみ、みんな。また明日から頑張ろうね」


 パタンとドアを閉めたいづみちゃん。


 「芽李ちゃん、」
 「ん?」
 「みんなすごく頑張ってるよ。」

 2人で部屋まで戻る道中、唐突に切り出し出したいづみちゃんにうなづく。

 「きっと、みんな待ってるよ」
 「なにを、」
 「…んー、わからないならいいや。」
 「?」
 「あ、お部屋ついたね。じゃあ、また明日。手もお大事にね。」

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