第6章 丁子桜
各々が部屋に戻ったり、お風呂に入ったりと談話室が静かになった後、トボトボと……でもないか。普通に戻ってきた真澄君にご飯を出せば少し驚いた顔をしていた。
「どうしたの、その顔」
「これ、俺の分?」
「そうだよ、あたりまえじゃん。」
「ありがとう」
「あれ?やけに素直だね、」
「…別に。ないと思ったから、俺の分」
なんだか、別人みたい。
「私がいる限り、君のご飯は保証しよう。だから、ないなんて思わないでいいよ。」
「…」
「例えば君と私が喧嘩しても、絶対保証する。
お腹膨れないと、次の行動するのだってしんどくてだるくて嫌になっちゃうしね。
シトロン君に言わせると、"腹が膨れても戦はいや"って言ってたけど。」
それを聞いてフッと笑った彼にやっぱりシトロン君は偉大だなと思う。
こんなふうに笑ってくれるなら、シトロン君語録集めとかないと。
「ねぇ、真澄君」
「なに」
「好きな食べ物なに?」
「カントクの作ったカレー」
まぁ、そうなるよね。…でも、それ作ってあげられないんだけど。
いづみちゃんに頼んだほうがいい感じ?
でも、それって彼女の仕事増やしちゃうし…カレー作りなら喜んでしてくれるだろうけど。
考えあぐねてると、ボソッと一言。
「…生春巻き。」
「え、あ」
「もう言わない。ごちそうさま。今日のご飯も悪くなかった。」
素直じゃない彼の素直な一言に明日も頑張ろうと思えて。
今日は真澄君素直記念日に認定しようなんて、考える…………あ。至さんのご飯、忘れてた。