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3月9日  【A3】

第6章 丁子桜


 「だだだだだ大丈夫だった?!芽李ちゃん!」
 「落ち着いて、落ち着いて。驚かせてごめんねって至さんが(たぶん、思ってる)。台本も読むっていってたから、安心して(多分)いいと思うよ、たぶん。」

 フォローって、こんな感じ?と思いながら言葉を紡ぐ。

 「うん、そっか。よかったぁ…、」

 安堵のため息を漏らす彼女に少し同情する。

 「芽李ちゃん、そういえば初代の人たちのこと何かしってたりする?」
 「ううん、あーでも。支配人なら知ってると思うよ、」
 「そっか、」
 「もう1人昔のこと知ってるかもしれない人いるにはいるんだけど、支配人のが確実かなぁ」
 「…わかった。聞いてみるよ、ありがとう。」

 …お昼ごはんの用意したら、もう一回台本読もう。

ーーーーーー
ーーー

ー…コンコン


 「芽李さん、俺っす。入っていいっすか?」

 その声によってやっと顔を上げる。

 「どうぞ」
 「やっぱり、部屋に居たのか。…って、台本ずっと読んでたとか?」
 「えへへ、面白くてつい。今何時?」
 「18時っす。」
 「は?!え?!い?!」
 「落ち着いてくださいよ、」

 ポンっと肩に手を置かれる。

 「ごめん、お昼ご飯…あ、夜ご飯も」
 「昼はみんな各々すませましたし、夜は監督のカレーだそうです。」
 「そっか…」
 「芽李さん?」
 「あ、ううん!なんでもないよ!!そっか。…ご飯食べたならよかった」

 自分ですらわからないチクッとした痛みに、気づかないふりをして笑顔を作ろうとしたとき、むにっと鼻をつままれる。

 「ふふ、変な顔。」
 「ちょ、つづるく?」
 「何に落ち込んだかはわかんねーっすけど、次そんな顔したらまたやるんで。

 …いやーでも、時間忘れるまで読んでもらえるなんて物書き冥利に尽きると言うか、嬉しいっすね。」

 にっこりと笑う彼は、さすが下に兄弟が多いだけあると言うか、なんというか。

 パッと離れた手にやっと息苦しさも、痛みも消えてしまう。

 「綴君、お兄ちゃんみたいだね」
 「まぁ、下にチビたちがいるから」
 「…綴兄って呼んでいい?」
 「アンタこないだからそれだな」

 耳まで赤くなった彼はフッとまた笑う。

 「ふざけてないで、行きますよ。姿見えないつって、みんなも心配してたんすから。」
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