第5章 小彼岸
舞台はイタリア、ヴェローナ…
キャピュレット家とモンタギュー家が長きにわたって抗争を続けている町。
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ジュリアスの乳兄弟の、ティボルト
神父さまに、
ロミオの親友の、マキューシオ。
それから、ジュリアスとロミオ。
情景が浮かんでくる、凄い、みんな生きてるみたいだ。
目の前にいるみたいだ。
恋愛ものじゃない、だけどすごく面白い。
ずっとずっとこの世界に浸りたくなるような、だけど背中を押してくれる力もあるような、そんなお話。
…春組にきっとぴったりだ。
みんなが演じるところ、はやく見たい。
こんなに素敵なお話を、春組のみんながしたら余計に素敵になるに違いない。
「…ありがとう、ございます。芽李さん。
恥ずかしいっすけど、めちゃくちゃ嬉しい。頑張ってよかったっス。」
「ほぼ、口にでてたネ」
「気を取り直して。
じゃあ、さっそく配役をきめていこうか。」
クスッと笑ったいづみちゃんが場を引き締めてる間にもほぼ口に出てたという恥ずかしさを誤魔化すように紅くなってるであろう頬をパタパタとあおぐ。
「あ、一応当て書きにしたんす。」
「そうなの?」
「主役のロミオは咲也のつもりで。」
「え!?オレですか!?」
「やっぱ、この中で一番最初の団員だし、春組っぽい感じがするから。」
「明るく元気でまっすぐ、王道ってイメージだもんね。」
2人の言葉にまるで自分が褒められてるみたいに嬉しくなる。
自慢の弟だから、言いそうになる。
でも、いえない。…っと、集中しないと。
「そんな、オレは舞台の上にさえ立てれば、脇役でも何でも、背景でもいいんです」
「背景って、そんな役ないから」
「だって、本当に、オレでいいんですか?」
「ノープロテインだヨ」
「プロブレムだろ。日本語以外も弱いのかよ。」
「どうでもいい。」
「じゃあ、座長は咲也くんに決まり!」