第5章 小彼岸
ほんとだ、おまじない効いたみたい。
だけど、今更みんなや綴君のとこには戻れないな…
今できることは何だろう、せめて出来ることをしないと。
出来ることって、何だろう…
「あ、こんなところに居た!芽李ちゃん、急に居なくなるからビックリしたよ!」
「いづみちゃん、」
手に持っていたそれを徐にポケットに隠す。
「…?」
「あの、」
「あ!そうそう、綴くんの台本完成してたからみんなで読むことになって、だから芽李ちゃんも行こう!」
「うん。…そういえば、綴君は??」
「それがね、疲れて寝ちゃったみたいなんだよね。一気に仕上げたみたいで。無理させちゃったかな」
少し気落ちしたようないづみちゃんにふっと笑う。
「じゃあ、起きたら元気になれるように回復飯つくってあげないとね。」
「カレーかな。」
「それは、いづみちゃんの回復飯かな。
まぁでも、お昼はみんなにカレーと綴くんには雑炊で夜はかた焼きそばでも作ろうか」
「やった♪」
「でも、カレーはやっぱりいづみちゃんの作るのすっっごく美味しいから、いづみちゃん担当ね」
「もっちろーん。まっかせなさーいっ♪」
「まずは、台本の確認と朝ごはんかな?お茶入れるね」
そう言って、キッチンに入る。
いづみちゃん以外のメンバーが、台本の束を持って談話室に到着する頃にちょうどよくお湯が沸いてお茶の香りが漂う。
それぞれが座った位置にそれぞれのカップを置く。
「酒井さんの分です。」
そう言って渡されたのは少し厚みのある台本。
恐る恐る受け取る、
頭によぎった”私なんか"をぶんぶんと払い消して、ありがとうといえば、咲の満面の笑みがそれでいいって言ってくれてるように思った。
「ええと、タイトルが『ロミオと』……『ジュリアス』?」
「ジュリエットが男になってるみたいですね」
「おかま?」
「オー、斬新ネ」
「男同士の友情ものみたい。」
感想を聞きながら、本に集中し出したみんなと同じように私もその世界に入り込む。