第5章 小彼岸
「がんばります!」
咲…。
「ちなみに座長には、リーダーとして春組をまとめてもらいたいと思ってます。お願いしてもいい?」
「リーダー……? オレにできるでしょうか?」
「大丈夫だよ。咲也くんなら、きっと。」
「……がんばります!」
「よし、その意気!他の配役はどうなってるの?」
「ジュリアスが真澄。」
「ふーん。」
「ロミオの友達、マキューシオが俺。
ジュリアスの兄貴分、ティボルトが至さん」
「年齢的にもちょうどいいね。」
こくんと、うなづいて続ける。
「で、ロレンス神父がシトロンさん。」
「オーウ、神父はセリフ少ないヨー」
「わざとっす」
「これが才能あふれるワタシに対する新人いびりネー。」
「アンタ、日本があんまり話せないでしょ!」
そのやりとりが漫才みたいで面白い、いづみちゃんがそれに対してフォローいれてる。
「当て書きだけあって、イメージもバッチリ。想像以上だよ、綴くん!
あとは練習をこなして、最高の状態で演じるだけだね!」
「はい!」
「その練習が大変そうっすけどね。」
「楽しみだヨー。」
「なんか、アンタ、テンション高い」
「そりゃあそうだよ。こんなにいい脚本ができたんだもん。稽古が楽しみ。」
やきもちをやく真澄君にもフォローをしつつ、明日からの稽古を告げるいづみちゃん。
「差し入れいっぱい作るね」
私もそう添えて朝食を温め直す。
「まずは、腹拵えしないとね!」
「オレも手伝います!」
申し出てくれた咲にそれぞれのお皿によそったものを運んでもらう。
「そういえば至さん、体調悪いんでしたっけ?」
「そうみたい」
「綴君、ご飯どうする?普通に食べれる?」
「っす、もうめちゃくちゃ腹減ってます。」
さすが大学生男子なだけあると感心しながら、それなら綴君用に作った雑炊は至さんに回そうと、思い立つ。
「それ、至さんに持っていくの?」
「うん。調子悪いなら、そっちの方いいかと思って。」
「そっか…、あ、じゃあこの台本も頼めるかな?」
「うん、もちろん。あ、食べてていいからね。あったかいうちに。」
「何から何までありがとうございます」
恭しく頭を下げる彼女に、私こそと軽く頭を下げればどこからともなく笑いが溢れた。