第31章 普賢象
no side
最近は談話室に千景さんがいるから、避けるように掃除に力をいれている。
だから、みんなともあんまり話せていないけど、舞台も回を重ねるごとに荷物も増えるからという理由を伝えれば、怪しまれずにすんだ。
談話室の前を通ればヒーローイタンビューみたいに春組のみんなに囲まれる千景さんの姿あって、和気藹々としてなんだか少しほっとしている私がいた。
掃除場所を求めて彷徨えば、見かけないドアがあって。
あれ?増築でもした??と、思いながらドアノブをひねれば鍵もかかっておらず案外簡単に開けることができた。
「ほこりすご…って、密さん??」
窓から光がさして、猫のようにうずくまる密さんがそこでお昼寝をしている。
密さんの昼寝場所ってこと?
「密さーん」
「……」
静かに寝息をたてている。
可愛い寝顔、女の子みたい。
起こすのは忍びないけど、こんなところで寝ていたら、埃まみれになってしまうと、体をゆすってもなかなか目を様ない。
「密かさん、今日のおやつスモアに…」
「…芽李それほんと?」
「うん、今決めました。密さんどうしてこの部屋に?」
「昼寝場所探してて、眠くて…ベットに入ろうと思ったら、部屋間違ってまたここに入っちゃって…ふぁっ、」
「またここに?」
「芽李迎えにきてくれたの?」
「私は掃除しようと思ったら、見かけないドアがあって好奇心でドア開けたら密さんの姿が見えたから」
「…じゃあ、寝る」
「え?」
「この部屋、内側からは開けられないから」
「ん?」
「部屋から出たら、スモア…」
「いや、待って待って!出られないってどう言うこと?寝ないでー、密さーん」
すっかり夢に戻ってしまった密さんを、一旦そのままにして、内側からドアノブをひねっても、確かに開かない。
鍵はついてないはずなのに。
「だれかー!」
…だめだ、みんな千景さんのインタビューしてるんだった。
「芽李、うるさい」
「だって密さんが寝るから」
「何しても無駄。だから、オレの枕になって」
「こんな埃だらけのところで寝たら、具合悪くなっちゃいますよ」
「大丈夫…慣れてる」
「慣れないでくださいよ!!」
「くー…」
「夜になるまで出られなかったらどうするんですか、密さん!」