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3月9日  【A3】

第5章 小彼岸


 そしてその日の夜…。

 夕飯後、みんなの食器を片付けてお風呂を用意して、そして昨日と同じくサンドイッチをつくる。

 本格的な脚本が出来るまでは重いものよりいいかと思って。

 もちろん具材は変える。
 昨日は卵だったから今日はツナ。あとは、クラムチャウダー。

 それからお風呂。

 そうしてるうちに至さんだけがケータイ片手に戻ってきて、

 「あれ?まだ起きてたんだ?」

 なんてことを聞かれて、私は何も言えなくなる。
 普通に聞かれたから、普通に答えればいいだけ。

 …ただそれだけなのに、

 「…っ、夜食用に軽食を作ってて。あぁもちろん!お風呂もできてますよ!」

 ちゃんと、笑えてる?
 至さんは、…みんなは、…違う。

 たった一言に怯えるほど子供でもないのに、

 「…」

 そんな私を見て至さんは何も言わない。
 ひゅっと喉が鳴るのを感じる。
 視線が痛い、これ以上やめて…ー

 「ねぇ…」

 その次に紡がれる言葉が怖くて仕方ない。
 やめて、何も言わないで…っ、

 「夜食、103に後で持ってきてくれない?みんなの後でいいからさ。とりあえず俺はお風呂貰うね。」

 ポンっとまた頭に乗った優しくて大きくて温かい手に、スッと肩の力が抜けるのがわかる。

 ー…パタン

 と、しまったドアに振り向いてももう至さんは居なかった。

 やだな、私ちっとも忘れてない。
 大家さんだってあんなによくしてくれてたのに…っ、

 何をこんなに怯えてるのか自分でもわからない、馬鹿らしい。

 それから、談話室に至さんは戻ってこなくて、他のみんながお風呂から出たのはもうすっかり夜中に近かったのだけれど、みんなの顔を見たら、少しホッとしてしまった。

 綴君の分と至さんの分、残った夜食をどうしたもんかとかんがえあぐねてると、先戻った真澄君の代わりにシトロン君が届けてくれるとのことでそれに甘えて、私は至さんの分を持って至さんの元へ。

 ー…トントン

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