第5章 小彼岸
「寮母さん、ここまででいいよ。ありがとね。」
「どういたしまして。手伝えることがあるならいつでも言ってくださいね。」
SFの宇宙船のコックピットのようなパソコンを設置しながら言う至さんに、そう伝えれば"うん" とはにかんで………………
そんな顔、反則じゃん?!ってなりながら真顔を保つのはほんとに大変だった。
危うくイケメンすぎて血を吐きそうだった。
やばかった。
と、至さん住むことになった103号室のドアを閉める。
そこにぬんっとあらわれた夕焼けのような目と空みたいな髪の色…
「…っ!」
叫びそうになったところを口を塞がれて声にならなかった。
シーだよっ!とジェスチャーをされコクコクとうなづけばやっと手が離れる。
「さんかく」
「うん?」
ぐいっと手を引かれ、連れてこられたキッチン。
「あの、どうしたのかな?」
彼が指をさした先にある朝の残りご飯で作ったオニギリ。
「あぁ、食べたいってこと?」
コクコクっとうなづく彼にどうぞと言うと、
「ありがと〜」
と、かわいらしく笑った。
立ったまま食べようとする彼にカウンターの席に座って食べるように言えば、はーいっとお行儀のいい返事。
「お味噌汁も飲む?ちょっと待ってね、温めるから。」
そう言って、鍋を火にかける。
…って、普通にしてるけど、誰だ彼は。
「オレはね〜、斑鳩三角っていうんだぁ」
「そっか、」
「うんっ、オニギリありがとう。とーってーも美味しかった〜。」
「喜んでもらえてよかった。お味噌汁もどーぞ」
うわぁっとキラキラした目のみすみくんを見てそういえば大根と油揚げのお味噌汁のうち大根は銀杏切りにしていれてたのを思い出す。
「大根もさんかくー!うれしいなぁ〜っ」
ー…えーっと?
妖精さんかな?
「おねぇさんのなまえは??」
「酒井芽李」
「そっか〜っ、めいはなんだかとってもさんかく〜っ
今度お礼にとくべつなさんかくあげるね〜っ
ご馳走様でしたーっ、」
素早くどこかにいなくなってしまった彼に、本当に妖精さんだったのかと思い直して、からになった器を洗う。