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3月9日  【A3】

第29章 御衣黄


 なんて言いつつ、両手に持たれた袋にはたくさんのパン。

 「ま、若い子がいっぱい食べるでしょ。きっと」
 「お店できそう」
 「確かに」

 会計をした時のレシートの長さに少し笑って、2人で帰り道を歩く。

 「お腹すいちゃった」
 「マシュマロ食べる?」
 「ありがとう、でも密さんの無くなっちゃうから」
 「そう」

 なんて話しているうちに、あっという間に寮について。
 玄関の扉を開けると、何やら騒がしく。

 「ただいま」
 「なんの騒ぎ?」

 たまたま近くに見つけたカズくんに声をかけると、まん丸の目をコレでもかって大きく見開いていて。

 「ひ、ひ、ひ、ヒソヒソと朝帰り?!」

 第一声それかよ。って思いつつ、思いの外大きな声で後ろでは密さんが耳を塞いでいる。
 私も少しキーンっとなった。

 「朝帰りって」
 「散歩してただけ」
 「ひそひそが散歩?!」
 「オレも散歩くらい行く」
 「そうだろうけど!こんな朝からは珍しくない?!」

 なんて言ってると、昨日とは打って変わってピョンっと可愛いゴムで前髪を結んで、ラフな格好の至さんが欠伸をしながらよってくる。

 「おかえり、芽李。密」
 「ただいま」
 「…うん」
 「おかえり、芽李」
 「さっき聞いたよ?」
 「俺はおかえりって言ったの」
 「…た、ただいま」
 「うん。おかえり。荷物持つよ」
 「いたるんが荷物持ち?!」
 「一成うるさいよ。ほら、早く入りな。2人のことみんな探してたみたいだから」
 「どうして」
 「急に2人がいなくなったって」
 「アリリンがトイレから戻ってきたら、ヒソヒソがいない?!ってなって、念のため探してたらメイメイも居ないってなってさぁー!ちょうどオレも喉乾いて起きたところだったからもうびっくり!!」
 「驚かせて、心配かけてごめん。お騒がせしました。たまたま私も起きたタイミングで、密さんに会って天気がいいからお散歩行こうって話になったの、公園まで歩いたら桜の蕾がもうあって、早いねこっちは」

 話をしながら靴を脱いで、中へと入る。
 密さんはあくびをしながらついてくる。

 談話室につくと、もうみんな起きていてそれぞれが席についていた。

 「おはよう、芽李さん」

 1番はじめに声をかけてくれたのは、万里くん。

 「おはよう」
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