第29章 御衣黄
なんて言いつつ、両手に持たれた袋にはたくさんのパン。
「ま、若い子がいっぱい食べるでしょ。きっと」
「お店できそう」
「確かに」
会計をした時のレシートの長さに少し笑って、2人で帰り道を歩く。
「お腹すいちゃった」
「マシュマロ食べる?」
「ありがとう、でも密さんの無くなっちゃうから」
「そう」
なんて話しているうちに、あっという間に寮について。
玄関の扉を開けると、何やら騒がしく。
「ただいま」
「なんの騒ぎ?」
たまたま近くに見つけたカズくんに声をかけると、まん丸の目をコレでもかって大きく見開いていて。
「ひ、ひ、ひ、ヒソヒソと朝帰り?!」
第一声それかよ。って思いつつ、思いの外大きな声で後ろでは密さんが耳を塞いでいる。
私も少しキーンっとなった。
「朝帰りって」
「散歩してただけ」
「ひそひそが散歩?!」
「オレも散歩くらい行く」
「そうだろうけど!こんな朝からは珍しくない?!」
なんて言ってると、昨日とは打って変わってピョンっと可愛いゴムで前髪を結んで、ラフな格好の至さんが欠伸をしながらよってくる。
「おかえり、芽李。密」
「ただいま」
「…うん」
「おかえり、芽李」
「さっき聞いたよ?」
「俺はおかえりって言ったの」
「…た、ただいま」
「うん。おかえり。荷物持つよ」
「いたるんが荷物持ち?!」
「一成うるさいよ。ほら、早く入りな。2人のことみんな探してたみたいだから」
「どうして」
「急に2人がいなくなったって」
「アリリンがトイレから戻ってきたら、ヒソヒソがいない?!ってなって、念のため探してたらメイメイも居ないってなってさぁー!ちょうどオレも喉乾いて起きたところだったからもうびっくり!!」
「驚かせて、心配かけてごめん。お騒がせしました。たまたま私も起きたタイミングで、密さんに会って天気がいいからお散歩行こうって話になったの、公園まで歩いたら桜の蕾がもうあって、早いねこっちは」
話をしながら靴を脱いで、中へと入る。
密さんはあくびをしながらついてくる。
談話室につくと、もうみんな起きていてそれぞれが席についていた。
「おはよう、芽李さん」
1番はじめに声をかけてくれたのは、万里くん。
「おはよう」