第5章 小彼岸
そして翌日、茅ヶ崎さんがみんなに少し遅れて入寮する日。
昨日の代わりに休んでいいよと言ってもらえたので今日は一日荷物整理を手伝おうと、ストリートACTに向かったみんなを見送りつつお昼ご飯の下拵えをする。
大したものは作れないけど、8人分ともなると結構な量になるし。
ー…ピンポーン
「はーい」
あの日のスーツとは違い少しラフな格好の茅ヶ崎さんは、あの日と同じ笑顔を浮かべている。
「改めて、今日からよろしくお願いします。茅ヶ崎至です。」
「はい、お待ちしておりました。中へどうぞ。」
そう言って中に案内する。
「昨日はすみませんでした、ほんとに恥ずかしいところお見せしちゃって。」
そう切り出せば、クスッと笑われた。
「いえ、可愛らしかったですよ」
なんて、
「お世辞までくれる。
ほんとにできたイケメン…
イケメン!?
いや、圧倒的イケメンの数。
恐るべし、MANKAIカンパニー!!
それにしても何か、話した方がいい?
あの、…茅ヶ崎さん、ご趣味は?」
「ぷはっ、…もうダメ。面白すぎ。」
「へ?」
「その質問のタイミングも意味も謎だけど、全部顔と声に出てるよ。
お世辞じゃなくて、ほんとに可愛いなぁって思ったんだけど。
それから、至でいーよ。俺のことは。
緊張してるみたいだけど、そこまで何か話そうとか意気込まなくて大丈夫だよ。」
茅ヶ崎さん改め、至さんからのお言葉を噛み砕くまでに、約数分。
え…?全部声に出てたのわたし。
カァッとそれを理解した瞬間に顔が真っ赤に染まる。
ポンっと大きな手を私な頭にのせて、ニッコリと笑う至さん。
「やっぱり、かわいーね。荷物の整理手伝ってくれる?寮母さん」
その瞬間、私は心の中で白旗を振りまくった。
…降参です。