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3月9日  【A3】

第28章 関山


 「姉ちゃん、見ててくれてありがとう。今の言葉で、救われたよ」
 「まだいい足りないんだけど」
 「ふふっ、これからはいつでも聞かせてくれるでしょう?」
 「もちろんだよ!!」
 「じゃあ、急がなくていいよ。姉ちゃんがいいたい時、オレがいつでも聞くから」

 え…。

 待って、

 …待ってくれ。

 かっこいい…だと?

 いや、かっこいいのはかっこいいんだが。
 あたりまえだ、咲だぞ?
 可愛いもかっこいいも綺麗も、何もかも、この世の褒め言葉全部似合うのが咲だぞ?

 うん。

 落ち着け、私は知ってる。

 私が1番知ってるんだけど、かっこいいの度が超えてるんだが。
 ポテンシャルが恐ろしいんだが?

 「姉ちゃん大丈夫?」
 「あ、うん。うん、大丈夫」

 覗き込む視線は可愛いし、やばい。私バグっている。ツッコミ要員で、ほんとうにあの3人の誰か連れてくるべきだったか。

 「姉ちゃん」
 「ん」
 「少し話は変わるんだけど、旦那さんのお写真ないの?」
 「え…?」
 「あ、嫌なら無理にいいんだ。どんな人かなって」
 「あぁ」

 そうだった、考えてなかった。
 なんて、伝えるべきか。

 一気に現実へと引き戻される。

 「実はね、別れちゃったの」

 あくまで事実だけを。
 別れたの一言で、頭の中が千景さんで埋めつくされる。

 「咲にはちゃんと今日言わなきゃって思ったから。
 あ、まぁ…うん。びっくりだよね」
 「なんで、」
 「私の浮気?とか」
 「は?」
 「なんてね、なんだろうね。思ったより、向いてなかったのかも、結婚」
 「浮気は?」
 「してないよ、そんな器用なことできない」
 「…そっか。まぁ、うん。そうだよね、姉ちゃんに浮気はできないよ、オレと一緒で不器用だから」
 「じゃあ、咲と一緒になる人は安心だね。って、そんな話じゃないか。
 だからね、なおさら合わせる顔なかったの。
 あんなふうに、突然寮を出たから」

 ねぇ、だけど浮気って言えば浮気だったのかな。
 千景さんの言う通り、カンパニーのグッズの中でただ1人分だけがわざとらしくないのだから。

 「姉ちゃん、寮に戻ってきたら?」
 「え?」
 「合わせる顔ないって言っても、今日どうせ合わせるんだし」
 「それはそうだけど、できないよ」
 「どうして」
 「このお家、気に入ってるんだ」
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