第5章 小彼岸
「そっか」
「はい。明日からの稽古はもっと、もーっと楽しみです!至さんも参加して、きっと綴君が素敵なお話を完成させてくれて、それを想像するとワクワクして止まらないんです。」
名残惜しいけど、これ以上乾かしたらふわふわの彼の髪がカサカサになってしまうと、ドライヤーを止める。
「酒井さん、明日は稽古参加してくれますか?」
「え?」
「あ、…何言ってるんだろう、俺っ、あの、忘れてください!!
ほんとに!!」
そのタイミングでみんながお風呂から戻ってきて、いづみちゃんも部屋から出てきて…
「…また、お話聞いてくださいね」
誤魔化すように咲が笑うから、気付かないフリをして私も笑った。
その後は、稽古の話をみんなの話を聞きながら夜食を食べて過ごした。
今日の温かい気持ちも、咲の髪の感触も、私きっとこれから先忘れないと思う。