第28章 関山
「…カズくん」
「ん?」
「次で降りるよ」
「うん」
カズ君の言葉を頭の中で反芻する。
…今更帰るのなんで都合が良すぎる。
私は少し、万里君のこと思い出してた。
他のみんなが許してくれたところで、左京さんは絶対許してくれない。
「メイメイ、バス停まったよ。
ここで降りるんでしょ?」
「あ、うん。行こっか」
バスを降りて、懐かしい道を行く。
「ここなら、電車でも良かったんじゃない?」
「そうだね。でも、電車だとみんなに会うかも知れないから」
「…そんなに、オレ達と会うの嫌?」
ピタッと歩くのを辞めたカズ君が、後ろで俯く。
「さっきも言ったんじゃん。嫌なんじゃなくて、今更どんな顔して会えばいいかわからないだけだよ」
「普通に会えばいいじゃん」
「カズ君は優しいからそう言うんだよ、みんながみんなそう言ってくれるわけ」
「ないわけないじゃん」
「…というかさ、たった1年にも満たなかったんだよ?
一緒に過ごしたって言ったところで、もうみんなだって忘れてる。カズ君は、覚えるの得意だからたまたま声かけてくれただけでしょう?」
カズ君の表情が歪んでく。
傷つけた…かもしれない。
「ごめん」
「メイメイ…後ろ」
「え?」
ーポンッ
背後から肩を叩かれて振り返ると、見覚えのある2人がいる。
「サクサク、セッツァー2人で買い物帰り?」
「んぁ、まぁそんな感じ。久しぶりだな、芽李さん」
いよいよまずいことになったと、脳裏で警鐘がなる。
ばっと逃げようと後ろをむけば、カズ君。
正面には咲と、万里くん。
「逃げようとしてんじゃねぇよ」
「逃げようとしてな…しました!しましたから、ちょっと睨むのやめてもらってもいい?」
なんて言ってると、ちょこちょこっと寄ってきた咲。
「姉ちゃん」
「うっ」
「携帯」
「え?」
「出して、ロック解除して」
「あ、はい」
言われるがままにしていると、スッと手から奪われたかと思えばあっという間に操作して、突き返される。
「オレの連絡先入れたから、消したら許さない」
「咲…」
「おかえり、姉ちゃん」
「ただいま」
「はい、言質ゲット〜」
「さすがセッツァーと、サクサク」
「え?」