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3月9日  【A3】

第28章 関山


 「…カズくん」
 「ん?」
 「次で降りるよ」
 「うん」

 カズ君の言葉を頭の中で反芻する。

 …今更帰るのなんで都合が良すぎる。
 私は少し、万里君のこと思い出してた。
 他のみんなが許してくれたところで、左京さんは絶対許してくれない。

 「メイメイ、バス停まったよ。
 ここで降りるんでしょ?」
 「あ、うん。行こっか」

 バスを降りて、懐かしい道を行く。

 「ここなら、電車でも良かったんじゃない?」
 「そうだね。でも、電車だとみんなに会うかも知れないから」
 「…そんなに、オレ達と会うの嫌?」

 ピタッと歩くのを辞めたカズ君が、後ろで俯く。

 「さっきも言ったんじゃん。嫌なんじゃなくて、今更どんな顔して会えばいいかわからないだけだよ」
 「普通に会えばいいじゃん」
 「カズ君は優しいからそう言うんだよ、みんながみんなそう言ってくれるわけ」
 「ないわけないじゃん」
 「…というかさ、たった1年にも満たなかったんだよ?
 一緒に過ごしたって言ったところで、もうみんなだって忘れてる。カズ君は、覚えるの得意だからたまたま声かけてくれただけでしょう?」

 カズ君の表情が歪んでく。
 傷つけた…かもしれない。

 「ごめん」
 「メイメイ…後ろ」
 「え?」

 ーポンッ

 背後から肩を叩かれて振り返ると、見覚えのある2人がいる。

 「サクサク、セッツァー2人で買い物帰り?」
 「んぁ、まぁそんな感じ。久しぶりだな、芽李さん」

 いよいよまずいことになったと、脳裏で警鐘がなる。

 ばっと逃げようと後ろをむけば、カズ君。
 正面には咲と、万里くん。

 「逃げようとしてんじゃねぇよ」
 「逃げようとしてな…しました!しましたから、ちょっと睨むのやめてもらってもいい?」

 なんて言ってると、ちょこちょこっと寄ってきた咲。

 「姉ちゃん」
 「うっ」
 「携帯」
 「え?」
 「出して、ロック解除して」
 「あ、はい」

 言われるがままにしていると、スッと手から奪われたかと思えばあっという間に操作して、突き返される。

 「オレの連絡先入れたから、消したら許さない」
 「咲…」
 「おかえり、姉ちゃん」
 「ただいま」
 「はい、言質ゲット〜」
 「さすがセッツァーと、サクサク」
 「え?」
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