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3月9日  【A3】

第28章 関山


 「メイメイ、友だちの引っ越しって嘘でしょ」

 ニッコリと笑ったカズ君の顔が怖い。

 「ごめんごめん、サクサクにメイメイ見つけた時、すでに連絡してたんだよね。
 もちろん他のみんなには言ってないよ?2人とここで会ったのはたまたまだけど」
 「そーそー、たまたま。咲也と古着屋で買い物してたら、ちょうど一成から連絡きてさ。
 こんなに上手く合流できるとは思わなかったけど」
 「姉ちゃん、騙すようなことしてごめんなさい。でも、すぐどこか行こうとするから。
 一成さんに、姉ちゃんが元職場に行くみたいって聞いて、そしたら万里君がじゃあ会えるかもって」
 「つーことで、俺らもお供しますよ」
 「いいよね、姉ちゃん」

 咲にそんな顔されたら、余計断れないじゃないか。

 「うん」
 「やりー!」
 「つってもさ。もうばあちゃん、あそこにはないぜ?」
 「え?」
 「うん。姉ちゃんがお世話になってたからって、オレ、万里くんや真澄くんとお手伝いに行ったりもしたんだけど、去年かな?
 息子さんと住むことになったって」
 「芽李さんと連絡取れないから、いつか会った時はよろしく言ってくれって。
 今はシャッター閉まってるけど、行く?」
 「…そう」

 こうやって、少しずつ変わってく。
 お婆ちゃんに挨拶できないのは残念だ。でも、自業自得だ。

 「北海道行ってすぐ、不注意で携帯こわしちゃって」
 「あ、そうなの?」
 「芽李さん抜けてるとこあるもんな」
 「着信拒否かと」
 「しないよ!!するわけないよ?!当時は、連絡きても返せなかったかもしれないけど、咲のこと着拒はないよ。咲の連絡先とかプレミアだよ?…って」
 「ははっ、芽李さんらしいな。後でばあちゃんの連絡先教えてやるから、連絡してみ。
 っつーことで、寮でいい?」
 「ただいまって言ったもんね」

 咲の可愛い顔と、万里くんの綺麗な顔に詰め寄られるなか、カズ君は携帯をいじっている。

 「えーっと…」
 「何人か居ないみたいだけど、すぐ帰ってくるって。ちょうどいいじゃん」
 「どうせ今日もカレーだし、食ってけば?」
 「でも」
 「いいだろ、遅かれ早かれいつかはこうなってたんだから」
 「合わせる顔ないし、みんなのお土産も持ってないし」
 「でも、姉ちゃん何回かお芝居観にきてたよね」
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