第28章 関山
「メイメイ、友だちの引っ越しって嘘でしょ」
ニッコリと笑ったカズ君の顔が怖い。
「ごめんごめん、サクサクにメイメイ見つけた時、すでに連絡してたんだよね。
もちろん他のみんなには言ってないよ?2人とここで会ったのはたまたまだけど」
「そーそー、たまたま。咲也と古着屋で買い物してたら、ちょうど一成から連絡きてさ。
こんなに上手く合流できるとは思わなかったけど」
「姉ちゃん、騙すようなことしてごめんなさい。でも、すぐどこか行こうとするから。
一成さんに、姉ちゃんが元職場に行くみたいって聞いて、そしたら万里君がじゃあ会えるかもって」
「つーことで、俺らもお供しますよ」
「いいよね、姉ちゃん」
咲にそんな顔されたら、余計断れないじゃないか。
「うん」
「やりー!」
「つってもさ。もうばあちゃん、あそこにはないぜ?」
「え?」
「うん。姉ちゃんがお世話になってたからって、オレ、万里くんや真澄くんとお手伝いに行ったりもしたんだけど、去年かな?
息子さんと住むことになったって」
「芽李さんと連絡取れないから、いつか会った時はよろしく言ってくれって。
今はシャッター閉まってるけど、行く?」
「…そう」
こうやって、少しずつ変わってく。
お婆ちゃんに挨拶できないのは残念だ。でも、自業自得だ。
「北海道行ってすぐ、不注意で携帯こわしちゃって」
「あ、そうなの?」
「芽李さん抜けてるとこあるもんな」
「着信拒否かと」
「しないよ!!するわけないよ?!当時は、連絡きても返せなかったかもしれないけど、咲のこと着拒はないよ。咲の連絡先とかプレミアだよ?…って」
「ははっ、芽李さんらしいな。後でばあちゃんの連絡先教えてやるから、連絡してみ。
っつーことで、寮でいい?」
「ただいまって言ったもんね」
咲の可愛い顔と、万里くんの綺麗な顔に詰め寄られるなか、カズ君は携帯をいじっている。
「えーっと…」
「何人か居ないみたいだけど、すぐ帰ってくるって。ちょうどいいじゃん」
「どうせ今日もカレーだし、食ってけば?」
「でも」
「いいだろ、遅かれ早かれいつかはこうなってたんだから」
「合わせる顔ないし、みんなのお土産も持ってないし」
「でも、姉ちゃん何回かお芝居観にきてたよね」