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3月9日  【A3】

第28章 関山


 いや、まさかの展開だった。
 急転直下ってこのこと?

 そんな想いに駆られた3日前。

 結婚も急だったけど、離婚はもっと急だった。
 え?離婚したことになるのか、これ。
 役所通してないし、まだ籍はあるんじゃないか?
 私まだ、卯月芽李じゃないのか?!

 とぐるぐる考えていたら、いつの間にか3日も経っていた。

 もちろん、その間はお腹もすくし眠くなるしで、ちゃんとご飯は食べたし、休息もとったし、お風呂も入った。

 抜け殻みたいにならなくて良かったと、頭の隅で考えていた自分もいる。

 ただ、少し。
 流石に少し、落ち込んだ。
 だって、二人暮らしはなかなか楽しく思ってたから。

 それって私だけだったのかなぁ。

 お土産を片手に、バスの時刻表を見る。

 4日目にして外に出たのが、ついさっき。
 これ以上部屋で1人でいたらこの先も引きこもってしまいそうな気がして、おばあちゃんには挨拶だけでもしようと北海道のお土産を持って出たのだ。

 「えーっと…」

 時刻を確認するために見ていたのに、目的地の手前、ふと目に入った懐かしい地名"天鵞絨町"。

 だから思わず手を伸ばした。
 吸い込まれるようにそうした時、後ろから声をかけられた。

 「びろーど」

 少し鼻にかかった声、優しくて、太陽みたいな声。

 「へ?」

 その声に振り返れば、金色の髪が日に照らされてキラッと反射するんだろうって、始まりの日を鮮明に思い出した。

 「"びろーどちょうって読むんだよ、書いてあるっしょここに。
 ローマ字で"

 なんつって!…やっぱり、メイメイだ!!」

 懐かしさが怖くて、振り向けないままいればヒョイっと背中側から顔を出したカズくん。

 「髪、伸ばしたんだ!ちょ〜可愛いね!」

 こっちを向いてよ!と笑顔がそう言ってる気がして、振りかえる。

 「カズ!お前またナンパかー?」
 「そうそう!だから、ごめんだけどまた今度〜!」

 友達に声をかけられたのに、そう断ってまたニッと笑う。

 「お茶しない??」
 「…まずくない?」
 「なんで?」
 「…プロの自覚ある?」
 「プロ?」
 「ファン、いるよね」
 「あ〜…、まぁ、大丈夫っしょ!"寮母"さんなんだから!」

 ぎゅっと、胸が痛い。

 「予定、あるし」
 「付き合ってもいい?」
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