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3月9日  【A3】

第1章 寒桜


 やり取りをする2人を見ながら思っていた私。

 我ながらどうかしていた。

 …それでも、今だからわかる。

 そんな時間が何よりも愛おしくて、尊くて、幸せな時間だったと。

 長い人生において、それが瞬きの合間くらいであったとしても、あの頃の記憶が私を支える。

 確信をもって言えるのは、私の弟は今でもきっと可愛いに違いないって事。

 だから、

 どうか、元気で生きていて…。

 両親からもらった名前のように、遅咲きでもちゃんと夢を満開に咲かせられるような、みんなの希望になれるような、そんな夢をちゃんと持てるような、あの頃と変わらないあの子であってほしいってこと。

 確信なんて強がりじゃなく、懇願に近い想いだった。

 …そうであって欲しかった。



































































 どのくらいそうして寝ていたのか、正直覚えていない。

 ただ、夢の中の私はとても幸せで、これが現実ならと夢の中で願った。

 今までの現実が嘘でやっと悪夢から醒めた、と。

 そんなことあるはずもなく…

ー…とんとん

 「ん…?」

 肩への刺激が、私を現実につれていく。

 「お客さん、終点ですよ」

 少しだけ困ったような表情に、慌てて起き上がる。

 「え、あ、あ!はい。…すみません。」

 優しそうな運転手さんが起こしてくれたおかげで、目が覚めた。

 慌てて周りを見渡せば、確かに私以外の乗客は居ないみたいで、よほど熟睡していたのがわかる。

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