第28章 関山

　「どう、いいの買えた？」
　「たくさん買っちゃいました」
　「ふっ、本当だ。送れば良かったのに」
　「あ、言われてみれば千景さんってば身軽」
　「送ったからね」
　「早く言ってくださいよ」
　「ごめんごめん、君もそうするものだと思ったから。でも大丈夫じゃない？俺も半分持つし」　
　「え？いいですよ、持てます」
　「手繋げないでしょ」

　…。

　ま、さっきまで繋いでましたけど。
　だけど、ねぇ、どんな顔してるの？

　「ほら、早く」

　ヒョイっと荷物を奪われ、すっぽりとその手に収まる。

　「あの」
　「…俺らしくない、かな。まぁ、思い出作りだよ、君と2人で北海道なんてしばらくなさそうだし」
　「いつもの気まぐれですか？」
　「そう言うこと」

　少しだけ、強く握られたきがしたから、私も同じようにすると、案外嬉しそうに笑った。

　「千景さん」
　「なに？」
　「私、最初こそどうなるかなって思いましたけど、楽しかったです。
　すごく、楽しかったです」
　「…そう」
　「あと、千景さんのことも大好きになりました」
　「…ふーん」
　「あ、嬉しくないです？」
　「いや」

　すこし、足早になった千景さんにひきづられるように、ゲートに向かう。

　「千景さん」
　「なに？」
　「早いです、すみません。もっとゆっくり」
　「あ…うん。ごめんね」
　「いえ」

　少しぎこちなくなったのは私のせい？

　「ねぇ、千景さん。またベルト締めてくれます？」
　「女の子苦手なんだけど」
　「それ、お嫁さんにいいます？」
　「嘘嘘。君は特別」
　「それが嘘」
　「"これだけ"は本当だよ」
　「これだけ？」
　「君は特別変な子だって思ってるからヘーキってこと」
　「突然失礼なやつきた」
　「嘘」
　「嘘つき」
　「そうだよ。だから、騙されちゃいけない」
　「千景さんに私は騙せませんよ」

　立ち止まったせいで、千景さんの背中に鼻をぶつける。

　「いたっ。すみません、でも急に止まらないでくださいよ」
　「…」
　「千景さん？」
　「なんでもない。…じゃあ、せいぜい暴いてみなよ。
　俺のこと」
　「怒ってます？」
　「…いや、期待してるだけ」
　「期待？」
　「そう」

　やっぱり少し怒ってるみたいに、スタスタと歩いて行ってしまう千景さんの歩幅に合わせるように、今度は私も足を動かした。