第28章 関山
千景さんの温度差に風邪をひきそうだ。
空港へ降りたって、またエスコートするみたいに手を繋いでくれて。
この人は私に復讐を手伝えと言いながら、同じ口で甘い言葉を吐く。
千景さんの気持ちを考えようとしても、いまいち上手く想像できない。
復讐したいほどの思いを、長く持ったことがないから。
…そうだっけ?
私、忘れてたけど、咲と再会するまではどうだった?
咲の近況を知るまでどうだった?
復讐までとはいかなくても、確かにあった。
人を恨む気持ち。
境遇を憎む気持ち。
「ねぇ」
「はい」
「似合わないよ、それ」
すっと、繋いでない方の指が伸びてきて、私の眉間のシワを伸ばす。
「君は能天気に笑ってなきゃ」
「能天気って失礼な」
「MANKAIカンパニーの皆さんに、お土産でも買っていく?」
「買いません。会えないもん。あ、でも、おばあちゃんには買ってこうかな」
「俺は後輩にでも買っていこうかな」
「あ!千景さんっ、こんなのどうです?ご当地のキーホルダーも…」
手にとって後悔する。
よく見てから取るんだった。
私の手の中を覗き込む、千景さん。
「えんたくナイトくん?これ、結構昔からあるよね」
「ですね、懐かしいなぁー」
「…これ、君のおすすめ?」
「いや、こっちの方がいいんじゃないですか?魔法の剣」
そう言って指を指したのは、小学生くらいの男のが喜びそうなキーホルダー。
ノリで言ったのに、千景さんは一つ手にとって、少し遠くを見回す。
「お土産コーナーに絶対あるよね、それ。まぁいいか。俺の妻が選んだって言おう。
あとは、お菓子でも買っていこうかな」
「カレーのスパイスとかどうです?千景さん、スパイス好きですよね」
「まぁ、自宅用にいいかも」
「私も買おうかな。チョコレートとか、スパイスとか」
「じゃあ、少し自由行動しようか。30分くらいなら時間あるから、30分後にここに集合で」
「はい!」
千景さんと別れ、お土産コーナーを物色する。
これもいい、あれもいいと手を伸ばして、誰に渡すわけでもないのに、気がついたらかがいっぱいになってた。
チョコレートに、スパイス、キーホルダーに、紅茶、クッキーに、お酒、マシュマロに、etc。
おまけに、三角のタペストリーまである始末。