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3月9日  【A3】

第26章 紫桜


 「貴方に会ってもう一度話してみたかったのよ」
 「…俺に?」
 「そう」
 「…どうでした?実際話してみて」
 「芽李ちゃんに似てる気がするわ、肝心なところで」

 話し込んでいると、場内へ促すアナウンスが聞こえて。

 「続きが気になるところではありますけど、そろそろ中へご案内致しますよ」
 「芽李ちゃん…」
 「始まるまでまだ時間あるので、きっと、来るんですよね?
 でしたら、万里…あー、」
 「万里ちゃんもいるのね」
 「ご存知でしたか」
 「ええ、真澄ちゃんと2人でお手伝いしてくれたこともあったわ。ふふ」
 「真澄まで…、ではその、万里に芽李が到着次第席に通す様に伝えておくので。ご安心ください」
 「何から何までありがとうねぇ」
 「いいえ、大事なお客様ですから。足元お気をつけください、入りましたら、段差がございますので」

 そう言いながら席へ案内する。

 《至さん》

 イヤモニに届いた声。

 《芽李さん、来たぜ》

 万里の言葉に、俺ってやっぱり運が悪いななんて思いながら、ご婦人に伝える。

 「芽李到着したそうなので、このまま席でお待ちください」
 「ありがとう、助かったわ」

 その言葉に会釈して、俺は持ち場に戻る。

 舞台が終わったら声をかければいいなんて悠長に構えて。

 「あ、茅ヶ崎君!茅ヶ崎君!!」
 「支配人?」
 「座席一席空いてませんでした??」
 「どうしたの?」
 「実は、関係者席が一席足りなくて…」
 「監督は??」
 「それが見当たらなくてぇ」
 「じゃー、芽李さんが座るはずだった席使えば?」
 「あ、万里。って、芽李来たんじゃないの?」
 「芽李さん、別にチケット持ってたみたいでよ。
 そっちで通したから」
 「摂津くぅん、ありがとうございますぅ〜」

 助かった!と満面の笑みを使った支配人は、早速さとどこかに向かって走って行った。

 「ごめんな、至さん」
 「なんのこと」
 「つーかよ、花屋のばぁちゃんなら俺が案内しても良かったのに」
 「それは思った。だけど、仕方ないだろ。顔見知りな気がして声をかけたらそうだったって話で、分からなかったんだよ。
 けど無下にもできないだろ?なんたって、芽李がお世話になっている人なら尚更」
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