第24章 紅豊
「今日、ありがとうございます」
「ううん、こちらこそ」
「?」
「紬、寝てたけどいい顔してたから。芽李、話きいてくれたんでしょ?」
「…」
「同じ舞台に立つからこそ、言えないことってあるんだよな。
引き止めたいとか、そう言うの抜きにしてもさ、芽李みたいな存在で、結構助けられてたんだよ。
みんなも、俺も。
男は馬鹿だからさ、余計なプライドとかそう言うのもあるしね」
言った後、しまったと思った。
また最後に残す記憶が、クソつまんないこと言う男なんて、ダサいし。
「…ごめん、そう言う顔させたいわけじゃない」
言い訳もダサいか。
「はは、俺、こう言う時にダメなんだよね。
あぁ、コレは弱音じゃなくて、もっとちゃんと若い時に人と関わっとくべきだったって言う、いつもなら思わないんだけど」
こう言うところが、芽李にそう言う顔させちゃうんだよなぁ。
「…至さん」
否定されても、仕方ないって思った。
「なに?」
でも、さ。
芽李がそう言うやつじゃないの、俺が1番知ってるじゃんとも思ったわけで。
「至さん」
お酒のせいか、枯れてる声も切なくて甘くて、なんか俺まで酔いそうだ。
「…うん」
「いたるさん」
クリスマスソングなんかなくても、日本中見たって俺たちの今が1番ロマンチックじゃない?
なんて、必死に意識を逸らそうとする。
「どうしたの、今日はいっぱい呼んでくれるね」
そうじゃないと、俺どうにかなりそうでさ。
「私今、お酒入ってるんです」
知ってるよ。
「うん」
だから困ってしまうな。
「だから、いつもよりめんどくさいし」
そういうとこ、可愛いって思っちゃってたな。
「明日には全部忘れるんです」
忘れないで、覚えててよ。
全部。
「うん」
「そうじゃなきゃ、ダメなんです」
芽李はずるいよ、まったく。
でも、どうしようもないくらい、まだやっぱりすきなんだよ。
「至さんに、会いたかった。
この間、街で見かけて、苦しかった」
いつ?
声かけてくれればよかったのに、なんて、口を挟めるわけもない。