第23章 萬里香
「それじゃあ、二人とも気をつけてね」
「はい、行ってきます」
今日もまた、さりげなく雪が降り始めた。
「雪、降り始めましたね」
「そうですね、寒くありませんか?」
「少しだけ、でもバッチリ防寒してきたので」
「そうですか。よかったです。…なんていうか、2人で出かけるって、知り合ってから結構するのに、初めてですよね」
「たしかに。…ふふ、参ったな」
「どうしたんですか?」
「少しだけ、舞い上がってるなと、思って。
芽李さんと一緒にいた咲也くんに初めて会った日、あの日少しだけ咲也くんが羨ましいなって、思ったんです」
「そうなんですか?」
「はい。だから、今日は、少しだけ浮かれていて…すみません、なんか」
いつも落ち着いて見える紬さんが、確かに少しふわふわしていて、なんだか可愛らしい。
「今から向かうところ、BARなんですけど、芽李さん飲めましたよね?」
「えぇ、お酒すきですよ。BARなんて、オシャレすぎてあまり行かないけど…でも、たのしみです」
「よかった。俺、カフェを巡るのがすきで。たまに万里くんと行くんですよ。
その時にみつけたんですよね、ここです」
こじんまりとしたたたずまい。
綺麗に手入れされた鉢が並んでいる。
「季節によって、お花を変えてるみたいです」
「素敵ですね」
「そうですよね。どうぞ」
木製の扉を開け、エスコートしてくれる紬さん。
なんていうか、様になっている。
「ふふっ」
「どうしました?」
「なんていうか、かっこいいなって思って」
すると急にあわあわしだす。
「その、…不意打ちはやめてください」
「不意打ち?」
「はい、不意打ち。だめです、絶対。…って、予約していた月岡です」
店員さんに見つめられて、余計顔を赤くした紬さん。
肌が白いから、余計目立つ。
案内された席には、少し早いスイトピーが飾られている。
自然を思わせる内装、メニューに添えられた挿絵がかわいい。
「いいお店ですね」
「こういう雰囲気、好きですか?」
「すごく、好きです」
「よかった。
メニューどうします?」
「紬さんのおすすめ、いいですか?すみません、私来慣れてなくて」
「もちろん」
注文してくれた紬さんは、やっぱり様になっていた。