第22章 大白
「いたいに決まってるよ。…でも、」
「なら」
「やっぱりいけない。ごめんね、万里くん。
万里くんは好きにしていいよ、姉ちゃんのこと」
頑固者。
ほんとに、アンタそっくりだよ芽李さん。
「悪かったな、変なこと言って」
「アンタが変なのはいつものことだろ」
「おい、春組教育どうなってんだ」
「真澄くん、ダメだよ。万里くんにそんなこと言ったら」
「ふんっ」
「ごめんね、悪気はないんだけど。反抗期で」
拗ねるように、ペンを進める真澄を見ながら、咲也も苦労するななんて思いつつ、他の奴らには素直にできんのにな、なんてやっぱり他人事のように思った。
「さてと、宿題も終わったし先に休むわ。これ片付けとくな」
「あ。ありがとう、万里くん」
「いーえ」
他人事とは言え、ここの奴らの士気上げるためにも、一肌脱がねぇとなんねぇのに、なーんも思い付かなねぇな。
って、柄にもねぇけど。
イージーモードが聞いて呆れる。
至さんのプロポーズ大作戦も、失敗。
芽李さん連れ去り作戦も、失敗。
弟引き摺り出す作戦も、失敗。
真澄も多分、ついて来てくんねぇよな。
やっぱ俺が粘るしかねぇか。
「ばーんり」
「至さん?」
咲也の部屋を出て、ぶつぶつ言っていたところに捕まる。
元はアンタが原因なんだぞ、なんて八つ当たりもいいところか。
「肉じゃが、食べたよ」
「あぁ、どうだった?」
「普通…臣の方が上手いね。煮込みは監督の方が得意だろうし」
「アンタさ、」
「けど、普通に俺が」
「…」
「普通に独り占めしたい味だったんだけど」
「はっ、」
「鼻で笑うなって。もう無理なの分かってんのに、お前わざとやってんの?どこで売ってんのアレ」
「花屋。左京さん御用達の」
「へぇ。納得…でも、俺には売ってくれないだろうね」
「さぁな、アンタもいく?俺は明日も行くけど」
「…いや、いいんだ。
その代わり言っておいてよ、美味かったよって。
さぁ、そんなことよりゲームゲーム。
付き合えよ、しばらく負けっぱなしだったしな。今日はコテンパンにしてやる」
「俺、明日早いんすけど」
「そう、俺はいつも通り」
ぐいっと肩に回る腕、抵抗虚しく引きづられ、至さんの城へと詰め込まれる。
やってらんねぇ。