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3月9日  【A3】

第22章 大白


 「いたいに決まってるよ。…でも、」
 「なら」
 「やっぱりいけない。ごめんね、万里くん。
 万里くんは好きにしていいよ、姉ちゃんのこと」

 頑固者。
 ほんとに、アンタそっくりだよ芽李さん。

 「悪かったな、変なこと言って」
 「アンタが変なのはいつものことだろ」
 「おい、春組教育どうなってんだ」
 「真澄くん、ダメだよ。万里くんにそんなこと言ったら」
 「ふんっ」
 「ごめんね、悪気はないんだけど。反抗期で」

 拗ねるように、ペンを進める真澄を見ながら、咲也も苦労するななんて思いつつ、他の奴らには素直にできんのにな、なんてやっぱり他人事のように思った。

 「さてと、宿題も終わったし先に休むわ。これ片付けとくな」
 「あ。ありがとう、万里くん」
 「いーえ」

 他人事とは言え、ここの奴らの士気上げるためにも、一肌脱がねぇとなんねぇのに、なーんも思い付かなねぇな。

 って、柄にもねぇけど。

 イージーモードが聞いて呆れる。

 至さんのプロポーズ大作戦も、失敗。
 芽李さん連れ去り作戦も、失敗。
 弟引き摺り出す作戦も、失敗。
 真澄も多分、ついて来てくんねぇよな。
 やっぱ俺が粘るしかねぇか。

 「ばーんり」
 「至さん?」

 咲也の部屋を出て、ぶつぶつ言っていたところに捕まる。
 元はアンタが原因なんだぞ、なんて八つ当たりもいいところか。

 「肉じゃが、食べたよ」
 「あぁ、どうだった?」
 「普通…臣の方が上手いね。煮込みは監督の方が得意だろうし」
 「アンタさ、」
 「けど、普通に俺が」
 「…」
 「普通に独り占めしたい味だったんだけど」
 「はっ、」
 「鼻で笑うなって。もう無理なの分かってんのに、お前わざとやってんの?どこで売ってんのアレ」
 「花屋。左京さん御用達の」
 「へぇ。納得…でも、俺には売ってくれないだろうね」
 「さぁな、アンタもいく?俺は明日も行くけど」
 「…いや、いいんだ。
 その代わり言っておいてよ、美味かったよって。
 さぁ、そんなことよりゲームゲーム。
 付き合えよ、しばらく負けっぱなしだったしな。今日はコテンパンにしてやる」
 「俺、明日早いんすけど」
 「そう、俺はいつも通り」

 ぐいっと肩に回る腕、抵抗虚しく引きづられ、至さんの城へと詰め込まれる。

 やってらんねぇ。
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