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3月9日  【A3】

第22章 大白


 「プロポーズといえば、至、芽李に言ったんでしょ」

 真澄の一言で、ピタッと咲也の鉛筆が止まる。

 「芽李がでてったの、そのせい?」
 「真澄、お前なんでそれ」
 「聞いたから。ドアの前で」
 「いつ?」
 「芽李がいなくなる前の日、部屋の前で」
 「…まじか」
 「俺は監督がいればいいけど、…芽李がいないと、調子狂う。
 衣装合わせの時も、幸とかぎこちなかった」
 「まぁな」
 「咲也、どうにかなんないの?」
 「無理だよ、ねぇちゃん分かってないから」

 パタンと教科書を閉じた咲也。

 「オレやみんなと過ごしてるのに、ねぇちゃんは、いつも別のこと考えてる。
 分かってないんだ、みんなに大事に思ってもらえてるのに」
 「そういや、俺と飯食ってた時も役に立ってないとか色々言ってたなぁ、…けどさ」
 「ん?」
 「けど、この劇団の奴らのファーストコンタクトって、芽李さんきっかけってこと多くないか?
 秋組だと、俺も臣も左京さんもだろ?」
 「春組はともかく、夏は、幸と一成と三角もだ」
 「そうそう、冬組なんてほぼじゃねぇ?さすがに誉さんのことは分かんなかったみてぇだけど、密さんのこと知ってるみたいだったぜ?」
 「密?」
 「そうそう、寮を出た日に一緒にいたんだってさ」

 真澄は興味なさそうに、ふーんと相槌を打った。

 「寮母に自信がなくなったんなら、スカウトマンでもよくね?」
 「寮母に自信がないって、アイツ言ったの?」
 「役に立たないって、そう思ってるからだろ?」
 「…ふーん」
 「ねぇ、万里くん。どうして?」
 「何がだよ」
 「ねぇちゃんのこと、そんなに考えてくれるのはどうしてかなって」
 「そんなん…、好きだからだよ」

 シーン…と、静まり返る部屋。
 確かに姉弟(きょうだい)を好きだと、ダチに言われたらそうなるわな。

 「ねぇちゃんが好きなのは」
 「みなまでいうなよ、至さんだろ。いいんだよ、別に」

 ポンっと真澄の手が俺の肩に置かれる。
 こう言う時ばっかり寄り添わなくていいっつーの。

 「つーかよ、咲也お前の本心はどうなんだよ」
 「本心って?」
 「ねぇちゃんと、居たくないのかよ」
 「そんなの…」

 その顔を見ただけで十分に感じた。

 「そんなの、決まってるじゃん」
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