第22章 大白
「プロポーズといえば、至、芽李に言ったんでしょ」
真澄の一言で、ピタッと咲也の鉛筆が止まる。
「芽李がでてったの、そのせい?」
「真澄、お前なんでそれ」
「聞いたから。ドアの前で」
「いつ?」
「芽李がいなくなる前の日、部屋の前で」
「…まじか」
「俺は監督がいればいいけど、…芽李がいないと、調子狂う。
衣装合わせの時も、幸とかぎこちなかった」
「まぁな」
「咲也、どうにかなんないの?」
「無理だよ、ねぇちゃん分かってないから」
パタンと教科書を閉じた咲也。
「オレやみんなと過ごしてるのに、ねぇちゃんは、いつも別のこと考えてる。
分かってないんだ、みんなに大事に思ってもらえてるのに」
「そういや、俺と飯食ってた時も役に立ってないとか色々言ってたなぁ、…けどさ」
「ん?」
「けど、この劇団の奴らのファーストコンタクトって、芽李さんきっかけってこと多くないか?
秋組だと、俺も臣も左京さんもだろ?」
「春組はともかく、夏は、幸と一成と三角もだ」
「そうそう、冬組なんてほぼじゃねぇ?さすがに誉さんのことは分かんなかったみてぇだけど、密さんのこと知ってるみたいだったぜ?」
「密?」
「そうそう、寮を出た日に一緒にいたんだってさ」
真澄は興味なさそうに、ふーんと相槌を打った。
「寮母に自信がなくなったんなら、スカウトマンでもよくね?」
「寮母に自信がないって、アイツ言ったの?」
「役に立たないって、そう思ってるからだろ?」
「…ふーん」
「ねぇ、万里くん。どうして?」
「何がだよ」
「ねぇちゃんのこと、そんなに考えてくれるのはどうしてかなって」
「そんなん…、好きだからだよ」
シーン…と、静まり返る部屋。
確かに姉弟(きょうだい)を好きだと、ダチに言われたらそうなるわな。
「ねぇちゃんが好きなのは」
「みなまでいうなよ、至さんだろ。いいんだよ、別に」
ポンっと真澄の手が俺の肩に置かれる。
こう言う時ばっかり寄り添わなくていいっつーの。
「つーかよ、咲也お前の本心はどうなんだよ」
「本心って?」
「ねぇちゃんと、居たくないのかよ」
「そんなの…」
その顔を見ただけで十分に感じた。
「そんなの、決まってるじゃん」