第22章 大白
ニッコリと笑って、ものすごく冷たい声で。
俺でさえ、喉がヒュッと鳴った。
「オレの馬鹿な姉とか、馬鹿なこと言わないよね?」
馬鹿って2回も言いやがった、あの咲也が。
「えー…っと」
「万里くんにまで迷惑をかけるなんてほんと、」
また箸をもち、もぐもぐと咀嚼しながらキレている。
「あのな、咲也、」
「構わなくていいよ、あの人なんか。
自分本位で、馬鹿で、オレ今回ばかりは絶対許さないってきめてるから」
「でもな、」
「いっつも1人で突っ走って、オレのことは頼ってくれない。
本物の馬鹿」
「咲也、あのな」
「どうしたの、万里くん」
「いいのか、本当に」
「何が?」
「俺、明日から毎日通うことにした。だからお前のこと誘いにきたんだ。
学校の帰り、お前も一緒にいかねぇ?」
「行かない。ねぇちゃんが素直になるまで、迎えに行かない」
カシャンと箸を置いた時、あっという間に空になってた。
でも肉じゃがは完食するんだな…。なんて、言える雰囲気ではなかった。
「そっか」
それなら、どうすっかな…。
「放っておいていいよ、本当に」
そうは言ってもな…。
「つーか、ここ間違ってるぞ」
「ほんとだ、ありがとう!万里くん」
ニコニコーって笑ったお前を信じらんねぇよ。
怒ると怖いんだな。
「あぁ」
「あ、ねぇ。ここは?」
「ここはXを…」
いつの間にか勉強会に変わって、ついでに俺も宿題をすることにした。
決して現実逃避ではない。
実の弟がこれだと、ちょっと厳しいかもなー。
芽李さん、身内に甘いから咲也行けば案外ちょろくすみそうなもんなのに。
つーか、劇団員1人ずつ連れてくか。
そしたらバラすことになるもんなぁー。
まぁ、現に咲也にバラしてるようなもんだけどさー。
「万里くん、ペン回し上手だね」
「俺もそれくらいできる」
「さすが真澄くん」
「つーか、なんで真澄までいるんだよ」
「べつに」
真澄くらいならいっか?
「なぁー真澄、明日花屋いかねぇ?」
「花屋?」
「監督ちゃんにでもあげたら、喜ぶんじゃねぇ?」
「監督はカレーの方が喜ぶ」
「まぁ確かに」
「万里いい店知ってるの?」
「まぁ、ちょっとな」
「じゃあ、プロポーズの時紹介して」