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3月9日  【A3】

第5章 小彼岸


 「お兄ちゃん…?」
 「自分より歳上の妹は嫌っすよ。」
 「ババアって言いたいのか、コラ。ヤンノカコラ、表出るか、コラ。」
 「情緒不安定だな、オイ。誰もそんなこと言ってないから。
 咲也も固まってないで、飯食ってしまえ」

 そう言って指差す先を見ればもうとっくの昔にご飯を食べ始めてるいづみちゃんと、真澄君と、いつ起きてきたのかわからない支配人、そして亀吉の姿があった。

 「あ、はい」

 フリーズしてた咲が動きだす。

 「もーほら、ぶんぶん手振り回してないで、芽李さんも行きますよ」

 あの後、ご飯を済ませてみんなに見送られ職場に向かう。
 あの時の真澄君の清々しい笑顔絶対忘れない。 

 次は負けない…って、なににだよ!!

 と、訳の分からないノリツッコミをしているとあっという間に見慣れたシャッターの前にいて、それを開けつつお店に入る。

 「おばーちゃん、おはようございます」
 「悪いねぇ、急に呼び出してしまって」

 申し訳ないという顔をしているおばあちゃん。
 そんな顔されたら、余計何も言えなくなる。

 「いえっ、何からすればいいですか??」

 「じゃあ、まずは…」

ーーーー
ーー

 作業はお客さんが来るギリギリまでかかってやっと終わった。

 これが意外と重労働で、おばあちゃん1人だったら確かに大変だったろうと改めて思う。

 「お疲れ様、芽李ちゃん…ああ、そうだ」
 「ん?」

 お店の裏に入り、お婆ちゃんが持ってきたのは可愛らしい袋に入ったお菓子。

 「私1人では食べきれなくてねぇ。今日のお礼と言ったら少ないんだけど。
 よかったらこれ、持っていってくれるかねぇ?」

 そう言ってお土産までくれて、後は上がっても大丈夫だというおばあちゃんの言葉に甘えて、店じまいをしてから出れば当たりはすっかり夕暮れていた。
 早く帰ろうと、歩き出した先で学生服を着た子が何やら落としていったのが見えて思わずかけだす。

 落としていったのは、何やらメモ帳のようなもので。
 落とした衝撃で引っ掛けていた抑えが外れたのか中身が見えてしまっている。

 …女の子の洋服の絵?

 見るのは申し訳ないと思いながら、それを拾って土を落とす。

 落としたのに気づいてないのか、そのまま行ってしまう背中にようやく声をかけると、緑の髪が揺れて。
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