第5章 小彼岸
「なんとかなった」
スパイスガチ勢だったいづみちゃんが、支配人の作ったアレを見事にカラーへと作り変え、一切手をつけなかった真澄君がおかわりしている。
そりゃそうだ。
いづみちゃんガチ勢だもんね、真澄君は。
「明日からは、ぜったいみんなのご飯は私が守るからね。
いづみちゃんもありがとう」
「ううん、カレーでこんなに喜んで貰えるなんてやっぱり嬉しいよ。明日から、よろしくね!芽李ちゃん!」
これからはぜったい支配人はキッチンに立たせないと、その日強く誓った。
そして、翌日…ー。
ーーーーー
ーー
「ごめんねぇええ!いづみちゃぁあん」
朝イチでかかってきた急遽お店を開けるから手伝って欲しいというおばあちゃんからの電話。
なんでも、古くからのお付き合いがある常連さんから大きな注文が入ったとのこと。
申し訳ないが手伝ってくれると助かると言われたら、仕事だし断るわけには行かなくなる。
「大丈夫だよ、みんなもいるし。仕事なら仕方ないよ。」
なんて言って微笑んでくれる彼女は聖母か何かかと思う。
「アンタがいなくてもヘーキ。俺がいるから。」
出たな、悪魔の化身…碓氷真澄め!
「おい、真澄。そんな言い方ないだろ。」
真澄君の一言にすかさず叱るお兄ちゃん属性 皆木綴。
でも大丈夫、めげない私っ、
迫真込めて、ガシッと真澄君の両手を掴む。
「…頼んだよっ、真澄君!!
真澄君になら、私のこの…っ、無念を!!
…っ、任せられるっ」
真澄君の目が揺れる……わけもなく。
「うざい、掴むな、離せ。アンタのためじゃない、監督のためだから。」
バシッと離された手に、ガクッと肩を落とす。
みんなとわちゃわちゃ仲間集めしたかったのに。
なんならきび団子も作るのに。
きびだんごつくったことないけど。
某大手のサイトになら作り方載ってる?
「酒井さん、任せてください!俺たちに!」
大天使うちの弟、優勝。
「ありがとう、佐久間君…っ、きび団子持ってく?」
ぎゅうっ
「わっ!」
ベリっ
「アウト!芽李さん、アウト!!」
「うるさい、犬ぅ」
「誰が桃太郎に出てくる犬だよ!!
ったく、ほら…早くしないと遅れますよ。」